誰がいつ入ったかを残すオフィス入退室管理システムの選び方
対象の目安: 小規模オフィスとサーバー室の出入口を整える管理担当 / 実務

深夜に社内のファイルサーバから顧客名簿が持ち出された疑いが出たとき、最初に見たいのは「その時間に誰がオフィスにいたか」です。ところが多くの小規模オフィスでは、この問いに答える材料がありません。玄関はシリンダー錠で、鍵は5本を回し持ちしていて、合鍵が何本あるかも定かではありません。監視カメラは入口を写しているものの、暗い時間帯の映像から人物を特定できるとは限りません。結局、誰がいつ入ったかは推測にしかなりません。
入退室管理システムは、この「誰がいつ」を扉の側で記録に変える仕組みです。ICカードや暗証番号で本人を照合し、照合が通ったときだけ電気錠を解錠し、その操作を履歴として残します。錠前としての機能に、認証と記録という二つの機能が乗ります。
この記事は、小規模オフィスやサーバー室の出入口に、記録付きの電気錠を入れることを検討している管理担当に向けて、選ぶときに見る項目を整理します。認証方式の選び分け、ICカードの中身による複製のしやすさの違い、後付けと工事の分かれ目、停電時の挙動、避難との両立、記録をどこに何件残せるか、退職時の失効、そして入退室管理では防げないことまでを扱います。仕様と法令は公的資料とメーカーの公式資料で確認できた範囲を土台にします。なお本記事はアフィリエイトリンクを含みます。紹介する製品の防犯効果や適合性を保証するものではなく、購入判断はご自身と設置環境に照らしてお願いします。詳細は広告およびアフィリエイトについてをご覧ください。
入退室管理が担う役割と担わない役割
入退室管理システムを入れる目的は、大きく三つに分かれます。第一に、入れる人を絞ることです。第二に、入った事実を記録に残すことです。第三に、鍵の運用そのものを楽にすることです。この三つは似ているようで、必要な機器の条件が違います。
入れる人を絞るだけなら、暗証番号式の電子錠でも足ります。記録を残すなら、履歴を保持して読み出せる機器が要ります。鍵の運用を楽にするなら、失効や権限変更を個別に行える仕組みが要ります。安い機器を選んだあとで「誰が入ったかを出してほしい」と言われて困る事態は、この三つを最初に切り分けていないときに起きます。
経済産業省の情報セキュリティ管理基準は、この分野の管理策を三つに分けて整理しています。物理的セキュリティ境界を定めること、その境界に対する物理的入退を管理すること、そしてオフィスや部屋や施設そのもののセキュリティを設計することです。扉の錠は二つめに対応する部品であり、境界の設計と部屋の使い方が先に決まっていないと、錠だけを買っても効きません。
この管理基準は、JIS Q 27001:2023およびJIS Q 27002:2024に準拠して改正されたものだと前文に記されています。日本規格協会の書誌情報によると、JIS Q 27001:2023の対応国際規格はISO/IEC 27001:2022です。ISMS認証を取っている組織でも、これから取ろうとしている組織でも、扉の管理策として何を求められているかは同じ体系の中で読めます。
一方で、入退室管理が担わない役割もはっきりしています。扉を通った人が中で何をしたかは記録されません。持ち出した物の中身も分かりません。この線引きを踏まえたうえで、記録の使いどころを決めます。
法令とガイドラインが求めていること
小規模オフィスで入退室管理を検討する動機のひとつは、個人データの安全管理措置です。個人情報の保護に関する法律第23条は、個人情報取扱事業者に対し、取り扱う個人データの漏えい、滅失または毀損の防止その他の安全管理のために必要かつ適切な措置を講じることを義務づけています。義務の対象は個人情報取扱事業者が取り扱う個人データであって、すべての事業者のすべての部屋ではありません。
その具体的な内容を示すのが、個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)の別添「講ずべき安全管理措置の内容」です。物理的安全管理措置として、個人データを取り扱う区域の管理、機器および電子媒体等の盗難等の防止、電子媒体等を持ち運ぶ場合の漏えい等の防止、個人データの削除および機器や電子媒体等の廃棄の四つが挙げられています。
区域の管理では、個人情報データベース等を取り扱うサーバやメインコンピュータ等の重要な情報システムを管理する区域を「管理区域」、その他の個人データを取り扱う事務を実施する区域を「取扱区域」と呼び分け、それぞれ適切な管理を行わなければならないと定めています。そして管理区域の管理手法の例として、入退室管理および持ち込む機器等の制限等を挙げ、入退室管理の方法としてICカードやナンバーキー等による入退室管理システムの設置等が考えられると書いています。
見落とされやすいのが、この例示の位置づけです。同じ別添の前文は、具体的な手法について、個人データが漏えい等をした場合に本人が被る権利利益の侵害の大きさを考慮し、事業の規模および性質、個人データの取扱状況、記録した媒体の性質等に起因するリスクに応じて必要かつ適切な内容とすべきものであるとしたうえで、必ずしも例示の内容の全てを講じなければならないわけではなく、適切な手法はこれらの例示に限られないと明記しています。つまり「ICカードの入退室管理システムを入れないと違法になる」という読み方は正確ではありません。扱っている個人データの量と性質に照らして、必要な水準を自分で決める作業が先にあります。
盗難等の防止については、個人データを取り扱う機器や記録された電子媒体、記載された書類等を施錠できるキャビネットや書庫等に保管すること、機器のみで運用されている場合はセキュリティワイヤー等により固定することが手法の例として挙げられています。部屋の扉と、部屋の中の入れ物は別の管理策です。扉に錠を付けたから書類は机上に置いてよい、とはなりません。
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IPAの「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」も、同じ方向の対策を具体的に書いています。取組の一項目として、サーバー等の設置エリアへの入退室を管理し、記録することを挙げ、情報の持ち出しや機器障害等を防止するために、サーバー等設置エリアに対する入室可能な者を制限し、入退室記録の取得と保管を行うよう促しています。図中には、施錠ができないエリアに設置する場合はサーバを専用ラックに入れて施錠するという注記もあります。
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認証方式を四つの軸で比べる
扉の前で本人を確かめる方法は、大きく四つに分かれます。持っているもの(ICカード)、知っているもの(暗証番号)、本人自身に関するもの(生体)、そして持っているものの変種としてのスマートフォンです。それぞれ運用上の弱点が違います。
| 認証方式 | 強み | 弱み | 記録との相性 |
|---|---|---|---|
| ICカード | 配布と回収が物理的に管理できる | 貸与と紛失、方式によっては複製 | 個人ごとに記録できる |
| 暗証番号 | 機器が安く、配線も少ない | 共有されやすく、番号の変更が手間 | 番号単位でしか記録できない |
| 生体認証 | 貸与ができない | 登録と読み取りの環境依存、生体情報の保管 | 個人ごとに記録できる |
| スマートフォン | 発行と失効が遠隔でできる | 電池切れと機種変更、アプリの障害 | 個人ごとに記録できる |
暗証番号の弱点は、記録の粒度に現れます。番号を全員で共有していれば、履歴に残るのは「その番号が使われた」という事実だけで、誰が使ったかは分かりません。個人ごとの番号を配れば粒度は上がりますが、機器の登録可能数が上限になります。美和ロックのマジカルテンキーユニットTKU-003は、暗証番号を9種まで登録できると記載されています。10人を超える事務所では、全員に別番号を配る運用が成り立ちません。
数字の位置が毎回変わる仕組みは、二つの弱点に効きます。ひとつは肩越しののぞき見で、もうひとつは指紋の付着や塗装の摩耗から番号を推測される事象です。テンキーの一部だけが擦り減っていれば、使われている数字が絞り込めます。位置が変わる方式ならこの手掛かりが残りません。
ICカードと暗証番号を組み合わせる運用も選べます。美和ロックのID照合ユニットMIU-301に接続するテンキーカードリーダーRDTK-B01は、カードまたはテンキーのいずれかで操作するOR認証モードと、カードとテンキーの両方で操作するAND認証モードを選択できると記載されています。AND認証にすると、カードを拾った人や借りた人だけでは扉が開きません。
IPAのガイドラインも、多要素認証の説明として、職場の入退室管理システムを利用する際に本人のみが持つICカード認証に本人のみが知るパスワード認証を追加することで、本人からのアクセスに限定できると述べています。すべての扉でAND認証にすると通行の負担が大きいため、サーバー室のような内側の扉だけをAND認証にする構成が現実的です。
生体認証は、貸し借りができない点で入退室管理と相性が良い方式です。ただし、指の乾燥や手袋、屋外の照度といった環境で読み取り率が下がること、登録作業に人手がかかること、そして生体情報そのものの保管が新たな管理対象になることを踏まえて選びます。経済産業省の情報セキュリティ管理基準は、物理的入退の認証の仕組みとして、アクセスカード、生体認証、またはアクセスカードと秘密の個人識別番号のような二要素認証の仕組みの使用を含めるとし、慎重を要する領域へのアクセスには二重のセキュリティドアの採用を検討するとしています。
スマートフォンでの解錠は、発行と失効を遠隔でできる点が運用上の利点です。入社当日に権限を付与し、退職手続きと同時に無効化できます。一方で、電池切れ、機種変更、アプリの更新やクラウド側の障害が解錠できない事由として増えます。物理鍵かカードのどちらかを併用手段として残しておくと、締め出しの被害を小さくできます。
後付けの暗証番号式電子錠(テンキー錠)
広告価格の目安: 1万円台から(執筆時点の目安)
配線工事を入れずに、まず入れる人を絞りたい段階で候補になる区分です。電池式が中心で、記録が残らない製品と、数十件から数百件の履歴を持つ製品が混在します。番号を共有すると履歴の粒度が落ちる点も踏まえて選びます。購入前に、扉の厚みとバックセット(扉の端から鍵穴中心までの距離)に適合するか、登録できる暗証番号の数、履歴が残るかと残る場合の件数、電池切れのときの非常解錠手段、そして賃貸なら扉に穴を開けずに設置できるかを各販売ページで確認してください。
※価格・在庫は変動します。最新の情報は各販売サイトでご確認ください。
ICカードの中身で複製のしやすさが変わる
「ICカードで入退室管理をしています」という説明は、実は中身を何も語っていません。同じ13.56MHz帯の非接触ICカードでも、暗号方式によって複製のしやすさがまったく違います。
もっとも注意が必要なのが、カードの固有番号だけを見て判定する運用です。美和ロックのID照合ユニットMIU-301の製品ページは、FeliCaのIDmとMIFAREのUIDについて、原則として固有の番号であることになっているが、固有性の保証はカード製作会社各社に委ねられていると注記し、カードから簡単に番号を読み取ることが可能なため、高いセキュリティ性を求める用途への使用には適さないと明記しています。メーカー自身が用途の限界を書いている記述です。
固有番号ではなく、カード内の鍵で相互認証する方式であれば、事情が変わります。ただしその暗号が破られていれば同じことです。MIFARE Classicが該当します。この製品はCRYPTO1という独自のストリーム暗号で認証と通信の暗号化を行いますが、2008年のESORICS会議で発表された論文がその設計を解析しています。
この論文から15年以上が経ちましたが、MIFARE Classicは今も広く使われています。2024年に公開された研究は、その状況を踏まえたうえで、無許諾の互換チップに仕込まれたハードウェアバックドアを報告しています。
新規に選ぶなら、AESを使う世代を前提にします。NXPのMIFARE DESFire EV3(型番MF3D(H)x3)は、Common Criteriaのセキュリティターゲットが公開されており、AESコプロセッサが128ビット鍵のAESに対応することと、EAL5にaugmentedを加えた保証パッケージでの評価であることが記載されています。リレー攻撃に対するProximity checkの機能も挙げられています。
この文書には、購入時に見落としやすい注意も書かれています。DESFire EV3にはMIFARE Classicのブロックをファイルシステムに写して動かす互換モードがあり、その互換モードとMIFARE Classicマッピングを有効にするアプリケーションは認証の範囲から除外されています。つまり「DESFire EV3のカードを買った」ことは、その現場がAESで運用されていることを意味しません。読み取り機側とシステム側がどのモードで認証しているかまで確認する必要があります。
FeliCaについては、ソニーが公式ページで、最新のFeliCa Standard ICチップ群がISO/IEC 15408のEAL5+以上を取得していると説明しています。技術方式としては、ISO/IECの通信プロトコル規格、NFCフォーラムの規格、そしてメッセージフォーマットやコマンドを含むJIS X 6319-4で構成されると案内しています。ここでも、カードの能力と、現場がその能力を使っているかは別問題です。FeliCaのIDmだけを読んで判定していれば、チップの評価等級は運用の強度に反映されません。
AES対応の非接触ICカード(DESFire系)
広告価格の目安: 1枚あたり数百円から(執筆時点の目安)
新規に社員証や入館証を作る段階で候補になる区分です。カードの世代が上がっても、読み取り機とシステムが固有番号だけを見ている構成では強度が上がりません。導入前にシステム側がどの認証モードに対応するかを確認してから枚数を決めます。購入前に、対応するチップの世代(EV1かEV2かEV3か)、使用中のリーダーの対応可否、印刷や写真の追加が必要かどうか、そして予備枚数と再発行の手配方法を各販売ページとシステムの提供元で確認してください。
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後付けで済ませるか工事を入れるか
機器の選択は、扉と壁に手を入れられるかどうかでほぼ決まります。選択肢は三つに整理できます。
第一が、既存の扉にかぶせる後付けの電池式です。工事がいらず、原状回復もしやすい代わりに、電池交換の手間と、扉の形状への適合という制約が付きます。GOALの製品一覧には、電池式スマートロックとして、カードと暗証番号により多種多様な利用シーンに対応でき後付けも可能な製品と、スマートフォンなどを様々なカギとして利用できるようにする製品が掲載されています。
第二が、既設扉に補助錠として面付けする方式です。GOALの面付本締電気錠は、既設ドアへの電気錠システムの導入が簡単な補助錠として案内されています。扉を交換せずに電気錠の制御を入れられるため、賃貸オフィスで検討しやすい構成です。
第三が、錠前ごと入れ替えて配線を引く方式です。制御盤と操作器を分けて設置でき、複数の扉をまとめて管理できます。電源の確保と配線ルートの検討が要り、内装工事の範囲になります。
扉の構造も選定を縛ります。框扉は框の幅が狭く、錠ケースを収める奥行きが取れないことがあります。GOALがEZSやEXSについて框扉にも取付可能と明記しているのは、この制約に対応した設計だからです。引戸には引戸用の電気錠があり、開き戸用の製品をそのまま使うことはできません。ガラス扉や自動ドアはさらに別の扱いになります。
注意
扉の適合は寸法だけでは判断できません。扉厚、バックセット、フロントの寸法、枠との隙間、丁番の位置、そして防火設備としての指定の有無が絡みます。既存の扉が防火戸に指定されている場合、加工が認定の条件から外れる可能性があります。発注前に、扉のメーカーと型番を控えたうえで施工業者と建物の管理会社に確認してください。
非接触ICカードリーダー付きの電気錠システム
広告価格の目安: 数万円台から(執筆時点の目安)
出入口を1箇所か2箇所に絞って、カード認証と履歴を確保したい段階の区分です。リーダー単体、制御器とリーダーの組み合わせ、錠前まで含むセットで価格帯が変わります。制御器の側で登録数と履歴件数が決まるため、人数の見込みから先に確認します。購入前に、登録できるカード枚数と保存できる履歴件数、履歴の読み出し方法(本体表示、USB、管理ソフト、ネットワーク)、対応するカード方式、電源の仕様、そして電気錠側との接続方式を各販売ページで確認してください。
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電源と停電時の挙動を先に決める
電気錠を選ぶうえで、機能の次に決まりが重いのが停電時の挙動です。美和ロックは、停電時に電気錠がどうなるかを型式によって三つに分けて説明しています。停電時に施錠するもの、停電直前の状態を保持するもの、停電時に解錠するものです。
この三つは、通電と施錠の関係で言い換えられます。通電で解錠する型式は、電気が止まれば施錠側に落ちます。通電で施錠する型式は、電気が止まれば解錠します。前者はセキュリティを優先し、後者は人の通行を優先する設計です。
自分の扉がどの型式かを調べる方法も、同じページに書かれています。電気錠の型番を調べてカタログで確認するか、電気錠制御盤の電源を切って停電の状況を作って確認する方法です。後者については、制御盤部と扉部の2人で作業し、閉め出されないよう注意するようにという注記が付いています。
用途ごとの傾向も示されています。事務所入口の扉に使われる電気錠の多くは、停電時に施錠になるものか、停電直前の状態を保持するものであり、IDカード等により出入り管理を行っている扉では停電時に施錠になる電気錠が多く使われるとしています。タイマーで就業時間中は解錠、時間外には施錠という運用の扉では、停電直前の状態を保持する電気錠が多いとされています。
停電補償機能の扱いも押さえておきます。電気錠制御盤に停電補償機能が設けられている設備では、停電補償時間のあいだは施錠を保持し、その後は解錠すると説明されています。バッテリーがあるから施錠され続けるとは限らず、時間切れの後の状態を確認しておく必要があります。
電磁ロック(電磁錠)は、この分類の中で位置が固定されています。美和ロックのEM2Lシリーズは、枠に本体を取り付け、扉にストライクプレートを取り付けて枠と扉の間を電磁石でロックする通電時施錠型であり、通電が切れると解錠すると記載されています。同社の停電案内でも、電磁ロックは通電時施錠の仕様でキーでの操作の機構を持たないため施錠できないと明記されています。
電池式の場合は、停電の代わりに電池切れが同じ役割を果たします。電池残量の通知があるか、切れたときにどう解錠するか、外部から給電して一時的に動かせるかを確認します。あわせて、電池切れの直前に警告が出る期間の長さも見ておくと、交換の運用が組みやすくなります。
扉用の電磁ロック(電磁錠)と電源ユニット
広告価格の目安: 数千円から数万円(執筆時点の目安)
機械的な可動部を減らしたい扉や、既存の錠前を残したまま制御を足したい扉で候補になる区分です。通電時施錠型のため、停電すると解錠側に落ちます。夜間の施錠を電磁ロックだけに任せる構成は避け、機械錠との併用を前提に考えます。購入前に、保持力(kgf)と扉の重量や使用頻度との釣り合い、電源電圧と消費電流、防滴の要否、扉の開き方向に合う取付金具が付属するか、そして通電が切れたときの動作を各販売ページで確認してください。設置は電気工事と扉の加工を伴うため、施工業者への相談を前提にしてください。
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避難できることを施錠より先に置く
施錠を強くするほど、非常時に出られなくなる余地が生まれます。ここは設備の設計思想ではなく、法令が枠をはめている領域です。
建築基準法施行令第125条の2は、屋外に設ける避難階段に屋内から通ずる出口、避難階段から屋外に通ずる出口、そしてそれ以外の出口のうち維持管理上常時鎖錠状態にあって火災その他の非常の場合に避難の用に供すべきものについて、その戸の施錠装置は屋内からかぎを用いることなく解錠できるものとし、かつ当該戸の近くの見やすい場所に解錠方法を表示しなければならないと定めています(法令の規定により人を拘禁する目的に供せられる建築物を除く)。
国土交通省が公開している「災害に備えるにあたっての関係法令等の解説」も、避難経路となる出入口の機能確保という項目でこの条文の概略を示し、あわせて消防法第8条の2の4を引いています。この解説は令和4年2月1日時点で施行されている法令等に基づくと明記されており、詳細は各法令を参照するよう促しています。
消防法第8条の2の4は、施錠そのものを直接扱う条文ではありません。学校や工場や事業場などの防火対象物で政令で定めるものの管理について権原を有する者に対し、廊下、階段、避難口その他の避難上必要な施設について避難の支障になる物件が放置され、またはみだりに存置されないように管理すること、そして防火戸についてその閉鎖の支障になる物件が放置され、またはみだりに存置されないように管理することを求めています。物を置いて塞がないという要求です。
設備の側でこの要求に応える仕組みが、アンチパニック機能です。GOALの製品一覧には、施錠していても内側のレバーハンドルやノブを回すだけで解錠でき、そのまま扉を開けられるアンチパニック錠が掲載されています。機能切替型電気錠については、アンチパニック機能を任意の側に付加できるとされています。外からは認証がないと開かないが、中からはハンドル操作だけで出られるという構成が、施錠と避難を両立させる基本形です。
一方で、避難経路に該当するかどうか、必要な表示は何か、消防設備との連動が要るかどうかは、建物の用途と規模と構造で変わります。この記事の範囲で断定できるものではありません。電気錠を扱う扉が避難に関わる可能性がある場合は、着工前に管轄の消防と建物の管理会社と施工業者の三者に確認してください。図面を持って相談すると話が早く進みます。
メモ
非常時に自動で解錠する連動を組む場合、火災報知設備の作動信号で解錠する構成が使われます。この連動は、防犯の側から見ると「報知設備を鳴らせば扉が開く」という経路にもなります。連動の有無と、鳴動時に解錠する扉の範囲は、防火と防犯の双方を見て決める設計事項です。判断は必ず消防と施工業者を交えて行ってください。
記録をどこに何件残すか
入退室管理の価値の半分は記録にあります。記録の設計で見る項目は、どこに残るか、何件残るか、どう読み出すか、そして改ざんできないかの四つです。
保存先は大きく二つに分かれます。制御器の中に持つ方式と、ネットワーク越しにサーバやクラウドへ送る方式です。制御器に持つ方式は、通信が切れても記録が取れる代わりに、件数の上限があり、読み出しに手間がかかります。美和ロックのID照合ユニットMIU-301は、カードを1,000枚、暗証番号を100種まで登録でき、操作履歴を5,000件保存できると記載されています。履歴の閲覧には別途管理PCソフトが必要だとも書かれています。
5,000件という上限は、人数と扉の数で寿命が決まります。従業員10人が1日に平均4回その扉を通れば1日40件、営業日20日で月800件となり、半年ほどで一巡します。古い記録から消える動作なら、必要な期間を保てるかを先に計算しておきます。
クラウド型は、件数の制約が緩む代わりに、月額費用と、サービス提供者への依存が加わります。通信が切れているあいだの記録がどう扱われるか、サービスを解約したときに過去の記録を取り出せるか、記録の保管場所がどこかを、契約前に確認します。
読み出し方法も、実務では効いてきます。管理ソフトが特定のバージョンのWindowsでしか動かない、USBメモリを挿さないと取り出せない、といった制約があると、記録を出す作業自体が滞ります。インシデントが起きた日に「ソフトが動くパソコンが見当たらない」となる事態は避けたいところです。導入時に一度、実際に記録を出力するところまで試しておきます。
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改ざんへの耐性については、経済産業省の情報セキュリティ管理基準が、全てのアクセスについて物理的な記録簿または電子形式の監査証跡を、セキュリティを保って維持および監視することを求めています。制御器の管理者パスワードが初期値のままだと、履歴を消せる立場の人が増えます。設置時に管理者の認証情報を変更し、誰が管理できるかを決めておきます。
記録の保存期間と個人情報としての扱い
入退室記録は、氏名や社員番号と結び付いた「誰がいつ入ったか」の情報です。検索できるように整理して保管していれば、個人情報の保護に関する法律第16条第1項が定める個人情報データベース等を構成することになり、その中の個人情報は個人データとして扱われます。従業員の記録であっても、個人データであることに変わりはありません。
保存期間について、法律が年数を定めているわけではありません。同法第22条は、個人情報取扱事業者に対し、利用目的の達成に必要な範囲内で個人データを正確かつ最新の内容に保つとともに、利用する必要がなくなったときは当該個人データを遅滞なく消去するよう努めなければならないと定めています。努力義務ですが、期間を無制限に伸ばす運用を正当化する条文ではありません。
実務としては、記録を何のために使うかを先に書き出し、そこから期間を導きます。労務上の在館確認に使うなら勤怠の締めのサイクルに、不正の調査に使うなら発覚までの想定期間に合わせます。決めた期間と理由を文書に残しておくと、あとから説明できます。機器側の上限が短い場合は、上限が実質的な保存期間になるため、定期的に書き出す運用を足すか、機器を選び直します。
利用目的の明示も要ります。入退室記録を人事評価や在席時間の管理に使うつもりがあるなら、防犯目的とは別の利用目的です。従業員に説明せずに用途を広げると、信頼を損ねるだけでなく、目的外利用の問題にも触れます。あわせて、本人からの開示請求に応じられる形で保管しているかを確認します。同法第33条は、本人が保有個人データの開示を請求できることを定めています。
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閲覧できる人の範囲も絞ります。誰がいつ入ったかの記録は、勤務実態や交友関係を推測できる情報でもあります。管理者以外が自由に見られる状態にしておくと、記録を残す目的から外れた使われ方が生じます。記録の閲覧権限を、扉の解錠権限とは別に設計しておきます。
鍵の貸し借りと退職時の失効
物理鍵の運用でもっとも管理しにくいのは、合鍵の総数です。何本作ったか、誰に渡したか、返ってきたか、返ってきた1本が本当にその1本かは、台帳がなければ追えません。退職者が1人出るたびにシリンダーを交換するのは現実的ではないため、実際には「鍵を返してもらったことにする」運用になりがちです。
ICカードや暗証番号に移すと、この問題の形が変わります。返却されなかったカードは、システム側で無効にできます。経済産業省の情報セキュリティ管理基準も、物理的領域へのアクセス権の管理プロセスに、認可の提供、定期的なレビュー、更新および失効を含めることを求めています。同じ基準は、物理的な鍵または認証情報の管理について、記録簿または毎年の鍵監査と、鍵管理プロセスの設定を挙げています。
失効を確実にする鍵は、人事の手続きと同じ流れに載せることです。退職の申請が上がったら、アカウントの停止と同じチェックリストにカードの失効を並べます。入退室管理システムが人事情報と連携できるなら、その仕組みを使います。連携できない場合でも、退職手続きの用紙にカード番号の欄を作るだけで、抜けは大きく減ります。
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貸し借りの抑止には、記録が使われていることを従業員が知っている状態が効きます。誰にも見られない記録は、事実上ないのと同じです。月に一度、深夜や休日の入退室だけを一覧で確認する運用を決めておくと、記録が生きた統制になります。確認は誰が行い、異常を見つけたら誰に上げるかまで決めておきます。
訪問者の扱いも設計に含めます。情報セキュリティ管理基準は、訪問者について、適切な手段でアイデンティティを認証すること、出入りの日時を記録すること、特定の認可された目的で領域のセキュリティ要求事項および緊急時の手順に関する指示の下でだけアクセスを許可すること、明示的に例外が許可されない限り全ての訪問者を監視することを挙げています。
来訪者用の受付システムを置くと、訪問者の記録が自動的に残ります。ただし、受付で名前を書いてもらう紙の台帳でも要求は満たせます。人数と来客の頻度に見合った方法を選びます。
来訪者受付システム(タブレット型)
広告価格の目安: タブレットとスタンドで2万円台から(執筆時点の目安)
無人受付にしていて、来客の記録が残っていない事務所で候補になる区分です。タブレットとスタンドの組み合わせで、担当者の呼び出しと来訪記録の保存を兼ねられます。来訪者の氏名や会社名も個人情報になるため、保存期間と閲覧範囲を決めてから運用を始めます。購入前に、スタンドが対応するタブレットの寸法、盗難防止の固定具が付くか、電源の取り回し、そして使用する受付アプリの記録保存先と保存期間の設定範囲を各販売ページとアプリの提供元で確認してください。
※価格・在庫は変動します。最新の情報は各販売サイトでご確認ください。
サーバー室に二重の境界を作る
小規模オフィスでも、サーバーや通信機器を置く部屋だけは扱いを変える価値があります。物理的にアクセスできる機器は、設定の初期化やコンソール接続を通じて管理権限に近づけるためです。
NISTのSP 800-116 Rev.1は、連邦政府の施設を対象にした文書ですが、区画の作り方の考え方が参考になります。この文書は保護区画をControlled、Limited、Exclusionの三段階に分け、それぞれに必要な認証要素の最小数を1、2、3と示しています。Controlledは所属の証明で足りる区画、Limitedは部門や役割による区画、Exclusionは個別の認可だけで入れる区画という整理です。
この段階分けをオフィスに当てはめると、建物の共用部が最も外側、オフィスの入口が次、サーバー室が最も内側になります。オフィスの入口はカード1要素、サーバー室はカードと暗証番号の2要素、というように内側ほど要素を増やす構成が素直です。
入れ子の区画には、外側の認証を内側で数えられるかという論点があります。SP 800-116 Rev.1は、この持ち越しを使えるのは、共連れのリスクを減らす保護がある場合に限ると述べています。具体例として、1回の認証につき1人しか通れないようにするゲートやターンスタイルの設置と、PACSが直近のアクセス判定を記憶して外周で認証した人だけに内側の通行を許す仕組みが挙げられています。
小規模オフィスにターンスタイルを置くのは現実的ではありません。そこで、サーバー室の扉ではオフィス入口とは別の要素をもう一度求める構成にします。カードで建物に入り、サーバー室ではカードと暗証番号を求める。この形なら、共連れで建物に入った人がサーバー室の扉で止まります。
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サーバー室を作れない事務所では、ラックの施錠が代わりを務めます。IPAのガイドラインが図中で示している「施錠ができないエリアに設置する場合はサーバを専用ラックに入れて施錠する」という考え方です。境界を部屋で作れないなら、箱で作ります。
情報セキュリティ管理基準の7a-7.3は、重要な施設を一般の人のアクセスが避けられる場所に設置すること、建物を目立たせず目的を示す表示を最小限にすることを挙げています。サーバー室の扉に「サーバー室」と大書きするのは、この考え方から外れます。
入退室管理で防げないこと
導入の前に、何が防げないかを言葉にしておくと、期待の置き所を間違えずに済みます。
第一が共連れです。認証した人の後ろに続いて入る行為は、扉の機構では止まりません。SP 800-116 Rev.1が示すゲートやターンスタイルは共連れを物理的に防ぐ手段ですが、小規模オフィスでは費用と面積が見合わないことが多くなります。代替として、一人ずつ通す運用を明文化すること、来訪者に見える証明書を着けてもらうこと、証明書のない人を見かけたら声を掛ける文化を作ることが、実際に効く対策です。情報セキュリティ管理基準が「目に見える証明書の着用」と「付き添いのない訪問者を見かけたときの通報」を並べて挙げているのは、機構では埋まらない部分を人で埋める設計だからです。
第二がカードの貸与です。本人が自分の意思でカードを渡した場合、システムは正規の解錠として記録します。履歴には貸した側の名前が残り、実際に入った人の名前は残りません。生体認証を混ぜると貸与はできなくなりますが、費用と運用の負担が上がります。ここでも、貸与を禁じる規程と、記録を定期的に見ていることの周知が土台になります。
第三が別の経路です。窓、天井裏、パーティションの上、他社と共用する天井空間などは、扉の錠と無関係に通れます。情報セキュリティ管理基準の7a-7.1.1は、境界に隙間がなく容易に侵入できる箇所がないこと、要員が不在のときには扉と窓を施錠すること、一階の窓については外部からの保護を考慮すること、換気口の位置も考慮することを挙げています。パーティションで区切っただけのサーバー室は、天井裏が抜けていれば境界として機能しません。
第四が、正規の権限を持つ人による持ち出しです。入る権限のある人が、入る権限のある時間に入り、持ち出す。この経路は入退室管理では止まりません。記録は「その時間に誰がいたか」を示すだけで、何を持ち出したかは示さないためです。ここを補うのは、書類と媒体の施錠保管、機器の持ち出し管理、システム側の操作ログ、そして監視カメラです。
情報セキュリティ管理基準の7a-7.4は、施設を認可していない物理的アクセスについて継続的に監視することを管理策とし、監視カメラなどのビデオ監視システムや侵入者警報、警備員を手段として挙げています。扉の記録とカメラの映像は、片方だけでは判断できない場面を互いに補います。
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賃貸物件で確認しておくこと
賃貸オフィスでは、扉と壁は自分のものではありません。工事の可否と原状回復の範囲は、賃貸借契約で決まります。
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は、民間賃貸住宅を対象にした文書であり、事務所の賃貸借を直接扱うものではありません。ただし、そこに書かれた考え方の前提は参考になります。同ガイドラインは、民間賃貸住宅の賃貸借契約について、契約自由の原則により民法や借地借家法等の法令の強行法規に抵触しない限り有効であるとし、原状回復の内容や方法等は最終的には契約内容や物件の使用の状況等によって個別に判断、決定されるべきものだと述べています。事務所の場合も、まず契約書を読むところから始まります。
確認する項目は次のとおりです。扉への穴あけが可能か、共用部の壁に配線を通せるか、電源をどこから取るか、退去時に何をどこまで戻すか、そして建物側の入退室管理システムと併存させられるか。ビルによっては、エントランスに管理会社のシステムが入っており、専有部だけ別のシステムを入れると社員が二枚のカードを持つことになります。管理会社のシステムに相乗りできるかを最初に聞いておくと、選択肢が変わります。
原状回復を軽くしたい場合は、扉に穴を開けない後付け型と、既存のサムターンにかぶせる方式が候補になります。粘着で固定する製品は、剥がしたときの塗装の状態が問題になり得るため、退去時の扱いを事前に管理会社と話しておきます。
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費用の内訳と段階的な入れ方
見積もりを比べるときは、金額の総額だけでなく内訳の項目を揃えます。入退室管理の費用は、機器代、施工費、カードなどの媒体代、そして継続費用の四つに分かれます。
機器代は、リーダー、制御器、電気錠、電源の合計です。制御器の登録数と履歴件数の上限が価格帯と連動するため、人数と扉の数から必要な仕様を先に決めます。施工費は、扉の加工、配線、電源工事、そして建物側の調整で変わります。既設扉に面付けするのか、錠前を交換するのか、壁に配線を通すのかで幅が出ます。
媒体代は、カードの枚数と再発行の頻度で効いてきます。紛失時の再発行が有償か、予備を何枚持つか、退職者から回収したカードを再利用するかを決めておきます。継続費用は、クラウド型なら月額の利用料、機器を買い切る構成なら電池代と保守の費用です。
段階的に入れる場合の順序は、扱っている情報の重みで決めます。サーバーと個人データを置いている部屋から先に固め、次にオフィスの入口、最後に会議室や倉庫という順序が素直です。個人情報保護委員会のガイドラインが管理区域と取扱区域を分けているのは、この優先順位の付け方と同じ発想です。
- 1
守る対象と区域を書き出す
個人データや機器がどの部屋にあるかを図面に落とし、管理区域に当たる部屋と取扱区域に当たる部屋を分けます。ここで扉の優先順位が決まります。 - 2
記録に求める粒度を決める
誰がいつ入ったかを個人単位で残すのか、部屋単位で足りるのかを決めます。個人単位なら暗証番号の共有では成り立ちません。 - 3
扉の現状を確認する
扉のメーカーと型番、扉厚、開き方向、框扉か引戸か、防火設備の指定の有無を控えます。この情報がないと機器を絞れません。 - 4
避難と消防の条件を確認する
その扉が避難経路に関わるかを、図面を持って管轄の消防と建物の管理会社と施工業者に確認します。着工前に行います。 - 5
停電時の挙動を選ぶ
停電時に施錠するか、直前の状態を保持するか、解錠するかを扉ごとに決めます。停電補償機能がある場合は補償時間後の状態も確認します。 - 6
認証方式と媒体を決める
カードの方式、暗証番号との併用の有無、内側の扉での二要素化を決めます。固有番号だけを見る運用にしないかを確認します。 - 7
登録数と履歴件数を人数から検算する
在籍人数と1日あたりの通行回数から、履歴が一巡するまでの日数を計算します。必要な保存期間に足りなければ仕様を上げます。 - 8
運用の担当と手順を決める
カードの発行と失効を誰が行うか、履歴を誰がいつ確認するか、記録の保存期間と閲覧範囲を文書にします。 - 9
設置後に通しで試す
全員のカードで解錠できること、履歴が出力できること、停電時と電池切れ時の解錠手段が使えることを実際に確認します。
クラウド型の入退室管理に対応するスマートロック
広告価格の目安: 本体2万円台から、月額の利用料は別(執筆時点の目安)
拠点が複数ある場合や、権限の発行と失効を遠隔で行いたい場合に候補になる区分です。本体価格だけでなく、月額の利用料と、通信を中継するゲートウェイの要否まで含めて比べます。通信が切れているあいだの記録の扱いと、解約時に過去の記録を取り出せるかは契約前に確認しておく項目です。購入前に、対応する錠前の形状と扉厚、法人向けの管理機能(利用者の一括登録、権限の有効期限、履歴の出力形式)が使えるプランか、電池の想定使用期間と残量通知、そして電池切れ時の解錠手段を各販売ページと提供元で確認してください。
※価格・在庫は変動します。最新の情報は各販売サイトでご確認ください。
導入前に確認する項目
発注前と設置後に確認する項目
- 守る対象の部屋を図面に落とし、管理区域と取扱区域を分けて優先順位を決めた
- 記録に求める粒度(個人単位か部屋単位か)を決め、認証方式がその粒度を満たすことを確認した
- 扉のメーカーと型番、扉厚、開き方向、框扉か引戸か、防火設備の指定の有無を控えた
- その扉が避難経路に関わるかを、図面を持って消防と管理会社と施工業者に確認した
- 停電時の挙動(施錠、状態保持、解錠)を扉ごとに決め、停電補償時間の後の状態も確認した
- 電池式の場合は、残量通知の有無と電池切れ時の非常解錠手段を確認した
- カードの認証方式を確認し、固有番号だけを見て判定する構成になっていないことを確かめた
- 制御器の登録可能数と履歴の保存件数を、在籍人数と通行回数から検算した
- 履歴の読み出し方法を確認し、実際に出力するところまで一度試した
- 記録の保存期間と利用目的と閲覧範囲を決め、文書に残した
- カードの発行と失効の担当者を決め、退職手続きのチェックリストに失効を入れた
- 賃貸の場合は、工事の可否と原状回復の範囲を契約書と管理会社で確認した
- サーバー室や機器ラックについて、扉の内側にもう一段の施錠を用意した
- 共連れと貸与は機構では防げないことを踏まえ、証明書の着用と記録の定期確認を運用に入れた
記録が残っている状態を保つための順序
入退室管理の選び方をひとつの筋にまとめると、扉の前に区域の設計があり、区域の前に守る対象があります。どの部屋に何があるかを決めないまま機器を選ぶと、通行の負担だけが増えて記録は使われないままになります。
機器の側で外せない確認は三つです。停電したときにその扉がどうなるか、記録が何件残ってどう読み出せるか、そしてカードの認証がどの方式で行われるか。美和ロックが停電時の動作を三分類で説明し、ID照合ユニットの製品ページに登録数と履歴件数を明記し、固有番号だけを見る運用の限界まで注記しているのは、いずれも導入後に取り返しにくい項目だからです。
法令の側で外せないのは、避難の確保です。建築基準法施行令第125条の2が求める「屋内からかぎを用いることなく解錠できる」という条件は、防犯の都合で緩められるものではありません。施錠を強くする設計と、非常時に出られる設計は両立できますが、両立させるための確認は着工前にしか行えません。図面を持って消防と管理会社と施工業者に相談する手間を先に払うほうが、後から手戻りするより軽く済みます。
そして最後に残るのが、記録を使う人がいるかどうかです。誰も見ない履歴は、容量を消費するだけの記録になります。月に一度、深夜と休日の入退室を眺める時間を決め、気になる記録があれば本人に確認する。この習慣があってはじめて、扉に付けた機器が統制として働きます。個人データを扱うなら、保存期間を利用の必要性から決め、必要がなくなったものは遅滞なく消去するよう努めるという法の考え方に沿って、残す期間も同時に決めておきます。記録を長く持つことと、記録を適切に扱うことは別の話です。
出典・参考
- 個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編) | 個人情報保護委員会
- 個人情報の保護に関する法律 | e-Gov法令検索
- 建築基準法施行令 | e-Gov法令検索
- 消防法 | e-Gov法令検索
- 災害に備えるにあたっての関係法令等の解説 | 国土交通省
- 中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン | IPA
- 中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン 第4版(PDF) | IPA
- 情報セキュリティ監査制度 | 経済産業省
- 情報セキュリティ管理基準(令和7年改正版) | 経済産業省
- JIS Q 27001:2023 情報セキュリティ、サイバーセキュリティ及びプライバシー保護 | 日本規格協会
- JIS Q 27002:2024 情報セキュリティ管理策 | 日本規格協会
- 電気錠に関する注意事項(停電時の電気錠の動作) | 美和ロック
- EM2Lシリーズ(電磁ロック) | 美和ロック
- ID照合ユニット MIU-301 | 美和ロック
- マジカルテンキーユニット TKU-003 | 美和ロック
- 電気錠 製品一覧 | GOAL
- MF3D(H)x3 (MIFARE DESFire EV3) Security Target Lite | Common Criteria Portal
- Dismantling MIFARE Classic (ESORICS 2008) | Springer
- MIFARE Classic: exposing the static encrypted nonce variant | IACR ePrint 2024/1275
- FeliCaとは | ソニー
- NFCとFeliCaの関係 | ソニー
- NIST SP 800-116 Rev. 1: Guidelines for the Use of PIV Credentials in Facility Access | NIST CSRC
- NIST SP 800-116 Rev. 1 (PDF) | NIST
- 「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)のダウンロード | 国土交通省
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