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24時間書き続ける前提で見る監視用HDDの選び方

対象の目安: 防犯カメラの録画環境を整える店舗と小規模オフィスの管理担当 / 実務

アオイ防御・運用担当
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24時間書き続ける前提で見る監視用HDDの選び方

事務所に泥棒が入った翌朝、録画機の前で映像を巻き戻そうとして、目当ての時間帯が残っていないと気づきます。あるいは再生ボタンを押しても画面が固まったまま進みません。防犯カメラを設置した店舗や小規模オフィスで実際に起きている失敗です。カメラは正しく動いていて、録画機のランプも点いていました。足りなかったのは、その裏で24時間書き続けているHDDの容量と耐久性でした。

監視カメラの録画は、パソコンの使い方とは書き込みの性質がまるで違います。電源を切る時間がなく、複数のカメラからの映像が同時に流れ込み、同じ場所に上書きを繰り返します。この用途に向けて作られたHDDが、監視用途向けHDDと呼ばれる区分です。

この記事は、防犯カメラの録画環境を整える店舗と小規模オフィスの管理担当に向けて、監視用途向けHDDを選ぶときに見る項目を整理します。ワークロードレートの読み方、保存日数から容量を逆算する式、CMRとSMRの確認、RAIDでのエラー回復制御、S.M.A.R.T.による予兆監視、保存期間の決め方までを扱います。仕様は各社の公式資料で確認できた範囲を土台にします。なお本記事はアフィリエイトリンクを含みます。紹介する製品の防犯効果や適合性を保証するものではなく、購入判断はご自身と設置環境に照らしてお願いします。詳細は広告およびアフィリエイトについてをご覧ください。

監視録画の書き込みが一般用途と違う三つの点

デスクトップ用HDDと監視用途向けHDDの違いは外見では分かりません。同じ3.5インチで、同じSATA 6Gb/sで接続します。違うのは想定されている使われ方です。

第一に稼働時間です。Western Digitalは製品資料で、一般的なデスクトップ用ドライブは短い間隔で動かすために作られており、高精細な監視システムの24時間365日という環境を前提にしていないと述べています。Seagateのデータシートは、SkyHawkの年間通電時間(Power-On Hours per year)を8760時間と明記しています。365日を24時間で掛けた一年の全時間であり、止まる時間を数えていない設計だと読み取れます。

第二に同時に流れ込むストリームの数です。録画機には複数のカメラが接続され、1台のHDDが複数の書き込み先を交互に処理するため、ヘッドの移動が増えます。第三に書き込みの比率です。Seagateの技術資料は、監視システムが書き込み中心で時間の最大90パーセントを書き込みに費やすことがあると述べています。読み出しが中心のパソコン用途とは、機構への負荷のかかり方が異なります。

Seagateの技術資料ImagePerfectは、監視システムが書き込み中心で最大90パーセントの時間を書き込みに使うと述べています。また、大きなキャッシュが媒体への書き込み前のデータ並べ替えを可能にし、ストリーム間のヘッドの往復を減らすとしています。

もうひとつ、ファームウェアの動作にも特徴があります。同じ技術資料は、SkyHawkのImagePerfectがATA-8のStreamingコマンドセットに対応し、ホストが決められた時間内でのデータの受け渡しを要求できると説明したうえで、この方式はデータの完全性よりも転送にかかる時間を優先すると述べています。読み取りに失敗したセクタを何度も読み直して正確な1バイトを取り戻すより、多少の欠落を許してでも次のフレームを受け取り続けるほうが監視映像では実用的だという判断です。ATA8-ACS(INCITS 452-2008)はT13の公開済み標準として掲載されており、Streamingの動作はこの系統のコマンドセットに由来します。

ここで押さえておきたいのは、これがSeagateがSkyHawkについて説明している動作であり、しかもホストがStreamingコマンドを使った場合の話だという点です。同じ動作を監視用途向けHDD全般の性質として一般化することはできません。他社の製品でファームウェアが何を優先するかは、その製品の資料で確かめる必要があります。

T13 Technical Committeeの公開済み標準の一覧には、ATA8-ACS(INCITS 452-2008)、ACS-2(INCITS 482-2012)、ACS-3、ACS-4が掲載されています。

この性質は、監視用途向けHDDを一般のデータ保管にそのまま流用しにくい理由でもあります。

ワークロードレートで耐久性を読む

監視用途向けHDDのデータシートで最初に見る項目は、ワークロードレートです。Seagateは仕様表でWorkload Rate Limit(WRL)として、Western DigitalはAnnualized Workload ratingとして掲載しています。単位はTB/年で、1年間にドライブが処理するデータ量の上限の目安です。主要3社の公式資料に載っている数値は次のとおりです。

製品ラインワークロードレート対応カメラ台数最大ベイ数MTBF
WD Purple (1TBから8TB)180TB/年最大64台(HD)8から16100万時間
WD Purple Pro (8TBから12TB)550TB/年最大64台(HD)とAIストリーム32No Limit200万時間
WD Purple Pro (14TBから26TB)550TB/年最大64台(HD)とAIストリーム32No Limit250万時間
Seagate SkyHawk (1TBから8TB)180TB/年最大64台8から16100万時間
Toshiba S300 (2TBから6TB)180TB/年最大64台最大8100万時間
Toshiba S300 Pro (4TBから10TB)300TB/年最大64台最大24120万時間

Western Digitalは、WD Purpleの180TB/年をデスクトップ用ドライブの最大3倍と説明しています。注意したいのは、同じMTBFやワークロードレートが製品ライン全体で一律とは限らない点です。WD Purple ProのMTBFは8TBから12TBが200万時間、14TB以上が250万時間と容量で分かれています。東芝もS300とS300 Proで回転数と記録方式が違います。製品名だけで判断せず、購入する容量の行を読む必要があります。

東芝の現行S300製品ページは、容量を6TB、4TB、2TB、記録方式をDrive-Managed SMR、回転数を5400rpm、ワークロードを最大180TB/年、対応カメラを最大64台、対応ベイ数を最大8、MTTFを最大100万時間と記載しています。上位のS300 Proは10TBから4TBのCMRで7200rpm、ワークロード最大300TB/年、対応ベイ数最大24、MTTF最大120万時間です。旧世代の製品シートには4TBから10TBという別の構成が載っているため、参照する資料の版を確認します。

自分の環境の年間書き込み量は、カメラのビットレートから概算できます。1Mbpsを1年間書き続けたデータ量は、1,000,000ビット毎秒に31,536,000秒を掛けて8で割り、約3.94TBです。全カメラのビットレートを合計して約3.94を掛ければ、年間の書き込み量が出ます。

カメラ台数1台あたりのビットレート合計ビットレート年間書き込み量の概算180TB/年に対する割合
4台2Mbps8Mbps約31.5TB約18パーセント
4台4Mbps16Mbps約63.1TB約35パーセント
8台4Mbps32Mbps約126.1TB約70パーセント
8台6Mbps48Mbps約189.2TB約105パーセント
16台4Mbps64Mbps約252.3TB約140パーセント
16台8Mbps128Mbps約504.6TB約280パーセント

この表は書き込みだけを数えた概算です。ワークロードレートの算定方法はメーカーによって異なります。Western Digitalは脚注で、ドライブへ、またはドライブから転送されたユーザーデータ量と定義しており、読み出しを含めて数える定義では映像を頻繁に見返す運用の負荷が表の数字を上回ります。購入前に各データシートの脚注で算定方法を確認します。本記事では運用上の余裕を確保するための保守的な目安として、上限に対する割合が7割を超えるあたりから、製品ラインを上げるか、HDDを増やして書き込みを分散させるかを検討する形をとります。

なお、カメラのビットレートは設定した値どおりに一定になるとは限りません。上限を決めたいときは、カメラ側に最大ビットレートの設定があるかを確認します。

Axisの技術資料は、シーン内の動きや事象がストリームのサイズとビットレートを大きく増加させうると述べ、可変ビットレートの難点として保存容量の必要量が予測しにくくなる点を挙げています。

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保存日数から必要な容量を逆算する

容量の見積もりも同じ考え方です。1Mbpsを1日書き続けると、86,400秒を掛けて8で割り、10,800,000,000バイト、およそ10.8GBになります。

必要容量(GB) = ビットレート(Mbps) x 10.8 x カメラ台数 x 保存日数

この式で出るのは、メーカーが表示する10進のGB(10億バイト)です。HDDの容量表示も10進なのでそのまま比べられます。ただしWindowsのエクスプローラなどが表示する容量は2進のギビバイト換算のため、4TBのHDDは約3.64TBと表示されます。1割ほど小さく見えるのは仕様で、故障ではありません。代表的な組み合わせを計算すると次のようになります。

カメラ台数ビットレート保存日数必要容量の概算2割の余裕を含む容量構成の一例(RAIDなし)
4台2Mbps14日約1.2TB約1.5TB2TBを1台
4台4Mbps30日約5.2TB約6.2TB8TBを1台
8台4Mbps30日約10.4TB約12.5TB8TBを2台
8台6Mbps45日約23.3TB約28.0TB8TBを4台
16台4Mbps30日約20.7TB約24.9TB8TBを4台

実際に発注するときは、この概算に余裕を足します。録画機が管理領域のために一定量を確保すること、動体検知の設定でも風で揺れる植栽や夜間の虫の飛来で録画が増える日があること、カメラの追加が後から出やすいことが理由です。計算値の2割から3割を上乗せしておくと、運用に入ってから保存日数を削る事態を避けやすくなります。表の構成例はRAIDを組まない単純合計での目安です。RAID 5なら実効容量が1台ぶん減り、RAID 1なら半分になるため、同じ必要量でも搭載台数か容量を上げて見積もります。

監視用途向けHDD(3.5インチ、4TBクラス)

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監視用途向けHDD(3.5インチ、4TBクラス)

価格の目安: 1万円台から(執筆時点の目安)

カメラ4台前後、保存30日程度の構成で候補になる容量帯です。この帯は同じ製品名でも回転数やワークロードレートが上位容量と違うことがあるため、仕様の確認先を間違えないことが大切になります。購入前に、その容量のワークロードレートが何TB/年か、記録方式がCMRかSMRか、録画機のマニュアルにある対応容量の上限を超えていないかを各販売ページで確認してください。

※価格・在庫は変動します。最新の情報は各販売サイトでご確認ください。

用途区分ごとの設計思想の違い

店舗や小規模オフィスで選択肢に挙がるのは、監視用途向け、NAS向け、デスクトップ用の三つです。それぞれの想定は次のように整理できます。

項目デスクトップ用NAS向け監視用途向け
稼働の前提断続的な使用24時間365日24時間365日
書き込みの性質読み書きが混在ランダムアクセスが多い順次書き込みが中心
ファームウェアの特徴(製品資料の記載例)一般的なエラー復旧WD Red PlusはNASでの利用を想定した記載SkyHawkはStreaming利用時に転送時間を優先
回転振動センサ搭載しないことが多い上位機種に搭載上位容量に搭載
想定ベイ数1台複数台複数台
代表的な製品名WD Blue、Seagate BarraCudaWD Red Plus、Seagate IronWolfWD Purple、SkyHawk、S300

ファームウェアの行は各社の製品資料に記載のある例で、区分全体に共通する性質ではありません。実際の動作は型番ごとの資料で確認します。

回転振動センサ(RV Sensors)は、複数台を同じ筐体に詰めたときに効いてきます。隣のドライブや冷却ファンの振動でヘッドがトラックから外れると書き込みをやり直すことになり、性能が落ちます。Seagateの技術資料は、極端な振動下ではサーボ系がトラックを捉えられずにドライブが機能を止めることさえあると説明し、RVセンサの信号をサーボ制御に送り返して振動由来のヘッドの動きを抑える仕組みを示しています。SkyHawkの仕様表では8TBから3TBにRVセンサの搭載が記載され、2TBと1TBには記載がありません。1ベイの小型録画機なら差は小さいものの、4ベイ以上の構成では仕様表で確認しておくほうが安全です。

NAS向けHDDを監視録画に流用してよいかという問いへの答えは、条件付きです。24時間稼働とRAID向けの設計は共通しますが、ファームウェアが優先する動作が違い、録画機メーカーの動作確認リストに載っていないことも多くなります。

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監視用途向けHDD(3.5インチ、8TBクラス以上)

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監視用途向けHDD(3.5インチ、8TBクラス以上)

価格の目安: 2万円台から(執筆時点の目安)

カメラ8台以上、あるいは保存45日以上を狙う構成で候補になる容量帯です。上位容量ではRVセンサやキャッシュ容量が下位容量と異なる場合があり、複数台を同じ筐体に入れるときはこの差が効いてきます。購入前に、RVセンサの搭載有無、キャッシュ容量、録画機側が1ベイあたり何TBまで認識するかを各販売ページと録画機のマニュアルで確認してください。

※価格・在庫は変動します。最新の情報は各販売サイトでご確認ください。

RAIDを組むときのエラー回復制御

複数台のHDDでRAIDを組む録画機では、エラー回復制御の有無が動作の安定に直結します。HDDは読み取りに失敗すると内部で再試行を繰り返し、この深い復旧処理の間はコマンドに応答しません。RAIDコントローラは応答が返らない状態を故障とみなし、そのドライブをアレイから切り離すことがあります。健全なドライブが1回の読み取りエラーで脱落し、アレイが縮退します。エラー回復制御を持たないドライブでRAIDを組んだときの典型的な失敗です。

Western Digitalが公開しているTLER(Time-Limited Error Recovery)の資料は、この経緯を具体的に説明しています。RAIDカードは一般にドライブの応答を8秒待ち、応答がなければ動作を起こすようにプログラムされています。TLERに対応したドライブは通常のエラー復旧を行ったうえで7秒後にRAIDコントローラへエラーを返し、復旧の作業を後回しにするため、アレイから外されません。同じ働きの機能は、他社の表記ではERCやCCTLと呼ばれます。この8秒と7秒はWestern Digitalが一般的な構成として説明している値です。実際の待ち時間や脱落の判定はコントローラ、ドライバ、設定によって変わるため、録画機やRAIDカード側の仕様もあわせて確認します。エラー回復制御は脱落の一因を減らす仕組みで、故障や通信断による脱落まで防ぐものではありません。

Western DigitalのTLER情報シートは、通常のデスクトップ用SATAドライブでエラー訂正が8秒を超えると、RAIDコントローラが応答しないディスクを故障とみなしてRAIDボリュームから外すと説明しています。TLER対応ドライブは通常のエラー復旧を行い、7秒後にRAIDコントローラへエラーを通知して復旧作業を後回しにするため、アレイから外されないとしています。高いI/O負荷の例として、ビデオ監視サーバが挙げられています。

監視用途向けHDDについては、Western Digitalの製品資料に、WD PurpleがRAIDエラー回復制御を備えるよう設計されており、対応する録画機での障害を減らすのに役立つという記述があります。RAIDを組む予定があるなら、この記述が製品資料にあるかを確認してから発注します。記述が見当たらない製品でRAIDを組むと、前述の脱落が起きる余地が残ります。

注意

RAIDは可用性を高める仕組みであって、バックアップの代わりにはなりません。誤操作による削除、ランサムウェアによる暗号化、火災や盗難といった事象は、RAIDのすべてのドライブに同時に及びます。証拠として残したい映像は、録画機の外へ複製する経路を別に用意します。

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NAS向けHDD(3.5インチ、CMRの中容量)

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価格の目安: 1万円台から(執筆時点の目安)

録画機の映像を別のNASへ複製する構成や、映像管理ソフトをサーバで動かす構成で候補になる区分です。同じ製品名の中にSMRの容量が混ざる系列があるため、型番単位での確認が要ります。購入前に、記録方式がCMRと明記されているか、エラー回復制御の記述が製品資料にあるか、使用するNASの互換性リストに型番が載っているかを確認してください。

※価格・在庫は変動します。最新の情報は各販売サイトでご確認ください。

録画機の仕様が決める上限

HDDを選ぶ前に読むべき資料は、HDDのデータシートではなく録画機のマニュアルです。NVRやDVRは組み込み機器であり、認識できる容量の上限や動作を確認したHDDの一覧が定められていることがあります。確認する項目は次の四つです。

  1. 1

    1ベイあたりの最大容量を読む

    録画機のマニュアルまたは仕様ページに、対応するHDDの最大容量が書かれています。8TBまでの機種に12TBを挿しても、期待した保存日数にはなりません。
  2. 2

    動作確認済みHDDの一覧を探す

    メーカーが型番単位の互換性リストを公開している場合があります。載っている型番から選ぶと、初期化や上書き動作でのつまずきが減ります。
  3. 3

    記録方式がCMRかSMRかを確認する

    上書きを繰り返す監視録画では、書き込み方式の違いが持続的な性能に影響します。製品ページか型番検索で確認します。
  4. 4

    複数台構成での制限を確認する

    RAIDに対応するか、同一容量でそろえる必要があるか、混在時にどう扱われるかは機種ごとに違います。

三つめのCMRとSMRは、購入前に必ず切り分けたい項目です。CMRはconventional magnetic recording、SMRはshingled magnetic recordingの略で、後者はドライブ側でデータ配置を管理するDMSMR(device-managed SMR)として製品に載ります。Western Digitalは自社のブログで、DMSMRのドライブが背景処理のためにアイドル時間を必要とし、それがない場合はコマンドの完了に時間がかかることがあると説明しています。監視録画は書き込みが途切れずアイドル時間が生まれにくい用途です。

Western Digitalのブログは、DMSMRのドライブが背景処理を行うためにアイドル時間を必要とし、それがない場合はコマンドの完了に時間がかかることがあると説明しています。同社はWD RedのDMSMRの容量を2TB、3TB、4TB、6TBと示し、CMRベースのWD Red Plusを1TBから14TB、WD Red Proを2TBから18TBと案内しています。これは2020年の記事の時点の構成で、現行のWD Red Plus製品資料に載る容量は2TBから12TBです。

監視用途向けHDDが必ずCMRとは限りません。Western Digitalの製品資料はWD Purpleの記録方式の欄にCMRと明記し、SeagateのSkyHawkのデータシートもRecording TechnologyをCMRと記載しています。一方、東芝の英語版S300製品ページは、6TB、4TB、2TBのラインについて記録方式をDrive-Managed SMRと記載しています。同じ監視用という区分の中でも方式が分かれるため、カテゴリ名ではなく型番で確認する姿勢が要ります。

保存期間の決め方

監視録画では、上書き録画を有効にした一般的な設定の場合、容量が埋まると古い映像から順に上書きされます。保存日数は容量とビットレートによって事実上決まるため、どれだけの期間を残す運用にするかを先に決めます。

防犯カメラの映像は、特定の個人を識別できる形で記録されるなら個人情報として扱われます。個人情報保護委員会のパンフレット「民間事業者向け カメラと個人情報保護法」は、防犯カメラの撮影に関する裁判例で考慮されてきた要素を整理しており、そのうち撮影された画像の管理方法の欄に、保存期間の長さ(例として90時間、2週間、1ヶ月、45日間等)、画像を閲覧できる者が限定されているか、他の媒体に保存して持ち出せないようにされているかが挙げられています。

個人情報保護委員会のパンフレット「民間事業者向け カメラと個人情報保護法」は、防犯カメラの撮影に関する裁判例で考慮されてきた要素として撮影された画像の管理方法を挙げ、その具体例に保存期間の長さ(例として90時間、2週間、1ヶ月、45日間等)などを示しています。

保存期間そのものについて、法律が年数を定めているわけではありません。同じパンフレットは、顔識別機能付きカメラシステムの登録期間に関する説明として、個人情報保護法には具体的な年数を決めたルールはなく、利用の必要性を考慮して保存期間を設定し、個人データを利用する必要がなくなったときは遅滞なく消去するよう努めなければならないと述べています。

この考え方の根拠は、個人情報の保護に関する法律の第22条です。個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)は同条を引用したうえで、利用目的が達成され当該目的との関係で保有する合理的な理由が存在しなくなった場合などには、当該個人データを遅滞なく消去するよう努めなければならないと解説しています。あわせて、法令で保存期間が定められている場合はこの限りではないとも記されています。

個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)3-4-1は、法第22条について、利用目的の達成に必要な範囲内で保存期間の設定等を行うこと、利用する必要がなくなったときは当該個人データを遅滞なく消去するよう努めなければならないことを解説しています。法令で保存期間等が定められている場合はこの限りではないとされています。

実務としては、保存日数を先に決め、それに合う容量を買うという順序になります。例えば1ヶ月を目安に置くと、月次の締めのサイクルと合わせやすく、被害の発覚が遅れた場合にも遡れます。逆に、保存日数を延ばすほど漏えい時に影響する範囲も広がります。必要性から日数を決めた記録を残しておくと、後から説明できます。

メモ

録画機の設定画面には、上書きを許可するかどうかの項目があります。上書きを禁止すると、容量が埋まった時点で録画が止まります。過去の映像を守る設定に見えますが、以後の事象がまったく残らなくなるため、監視の目的からは逆効果になりがちです。上書きを許可したうえで、必要な映像は発覚した時点で外部へ書き出す運用のほうが現実的です。

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S.M.A.R.T.で故障の予兆を見る

HDDは消耗品です。24時間365日の連続稼働では、通電時間が1年で8760時間積み上がります。壊れる前に気づく手段が、S.M.A.R.T.(Self-Monitoring, Analysis and Reporting Technology)です。ドライブが自分の内部状態を属性として保持し、ホストから読み出せるようにする仕組みで、録画機やパソコンから値を確認できます。

不良セクタに関わる属性は、故障の予兆として特に重く見られています。Synologyは自社のブログで、不良セクタに関する三つの属性を挙げ、これらが高い故障率と強く相関すると述べています。監視録画の運用で見る項目は次のとおりです。

  • Reallocated Sector Count (ID 5): 不良セクタを予備領域へ振り替えた数。ゼロから増え始めたら交換の検討に入ります
  • Reallocated Event Count (ID 196): 振り替えの発生回数。ID 5と合わせて増加の速さを見ます
  • Current Pending Sector Count (ID 197): 読み取りに失敗して振り替え待ちのセクタ数
  • 通電時間: 連続稼働では1年で約8760時間積み上がり、交換の目安を立てる材料になります
  • 温度: データシートの動作温度の上限と比べ、設置環境の見直しに使います

不良セクタ関連の属性が同時に増えているドライブは、媒体側の劣化が進んでいる可能性が高く、交換の優先度が上がります。値がゼロのまま推移していても故障しない保証にはならないため、通電時間と温度も並べて記録しておきます。

Synologyのブログは、不良セクタに関するS.M.A.R.T.属性としてReallocated Sector Count(ID 5)、Reallocated Event Count(ID 196)、Current Pending Sector Count(ID 197)を挙げ、これらがドライブの故障率の高さと強く相関すると述べています。不良セクタが生じたドライブはそうでないものに比べてアクセスに失敗する確率が10倍になるという調査を引き、定期的なS.M.A.R.T.テストの実施を勧めています。

録画機の管理画面に健全性を表示する機能があればそこで確認できます。表示が簡素な機種では、ドライブをパソコンへ接続して読み出します。

# 属性の一覧を表示する
sudo smartctl -A /dev/sda

# 短時間の自己診断を実行する
sudo smartctl -t short /dev/sda

# 自己診断の結果を確認する
sudo smartctl -l selftest /dev/sda

メーカー独自の健全性管理もあります。SeagateはSkyHawk Health Managementをデータシートに記載し、Western DigitalはWD Purple Proについて、Western Digital Device Analytics(WDDA)がドライブの状態を監視して動作改善の推奨を出すとし、対応する録画機やシステムが必要だと注記しています。

3.5インチHDDのUSB接続スタンド

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3.5インチHDDのUSB接続スタンド

価格の目安: 3千円台から(執筆時点の目安)

録画機から外したHDDをパソコンへつなぎ、S.M.A.R.T.の値を読むための機器です。映像の書き出しは録画機のエクスポート機能を使うのが原則で、録画機固有のファイルシステムや暗号化、RAID構成ではパソコンから中身を読めないことがあります。接続時に初期化を促す表示が出ても実行しないでください。製品によってはUSB変換チップがS.M.A.R.T.の読み出しに対応せず、値が取得できないこともあります。購入前に、3.5インチ用のACアダプタが付属するか、対応する最大容量、S.M.A.R.T.の読み出しに対応するかを各販売ページで確認してください。

※価格・在庫は変動します。最新の情報は各販売サイトでご確認ください。

壊れる前提で映像を二重化する

S.M.A.R.T.は予兆を捉える助けになりますが、すべての故障を事前に知らせるわけではありません。基板の破損や電源系の事故のように、前触れなく読めなくなる壊れ方もあります。証拠として意味のある映像は、録画機の中だけに置かないという方針が要ります。

組み立て方は三つあります。上書き周期より短い間隔で必要な区間だけを外部媒体へ書き出す運用、映像管理ソフトやNASへの二重記録、重要度の高いカメラだけをクラウド録画に載せる方法です。

IPAの「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」は、重要情報のバックアップについて、定期的に取得すること、使う装置や媒体はバックアップ時のみパソコンと接続すること、安全な場所に保管すること、戻せるかを定期的に確認することを対策例として挙げています。最後の項目は、書き出したファイルが再生できるかを実際に試すという意味で読むべきです。

IPAの「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」は、対策例として、重要情報のバックアップを定期的に行うこと、使用する装置や媒体はバックアップ時のみパソコンと接続すること、安全な場所に保管すること、戻せるか定期的に確認することを挙げています。

書き出した映像の保管先にも注意が要ります。個人情報保護委員会のパンフレットは、物理的安全管理措置として、カメラや画像データを保存する電子媒体等の盗難または紛失を防ぐために、設置場所に応じた適切な安全管理を行うことを挙げています。書き出したHDDを事務所の机の上に置いておく運用は、この趣旨から外れます。

外付けHDD(据え置き型、USB接続)

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外付けHDD(据え置き型、USB接続)

価格の目安: 1万円前後から(執筆時点の目安)

録画機から書き出した映像を保管するための外付けドライブです。中身は3.5インチのHDDで、電源アダプタが必要な製品が中心になります。書き出したまま常時接続しておくと、録画機側の障害や不正操作の影響を受ける余地が残るため、書き出しのときだけつなぐ運用が向きます。購入前に、録画機のUSB端子で認識できるファイルシステムか、電源アダプタの仕様、施錠できる場所に収まる寸法かを各販売ページで確認してください。

※価格・在庫は変動します。最新の情報は各販売サイトでご確認ください。

データシートの環境条件を守る

HDDの寿命は設置環境でも変わります。データシートに書かれている環境条件は、守るべき上限として読みます。

温度については、SeagateのSkyHawkのデータシートが動作時の周囲温度の下限を0度、ドライブが報告する温度の上限を65度と記載し、持続的な極端な温度での動作は推奨しない、高い温度での動作は製品の有用な寿命を縮めると注記しています。Western Digitalの製品資料もWD Purpleの動作温度を0度から65度と記載し、東芝のS300製品シートは表面温度で0度から70度としています。数字だけ見ると余裕があるように思えますが、これは上限であって推奨値ではありません。録画機を書類の山に埋もれさせない、吸気口をふさがない、夏場に閉め切る部屋に置かないといった基本が効きます。

振動については、RVセンサに加えて設置面の条件が関わります。東芝のデータシートは、S300の動作時の振動条件を5Hzから350Hzで4.90m/s2、350Hzから500Hzで2.45m/s2と記載し、S300 Proについては5Hzから300Hzで7.35m/s2、300Hzから500Hzで2.45m/s2と記載しています。同じ監視用の区分でも製品ラインで条件が違います。金属棚の上で他の機器と共振する場所や、シャッターの近くで開閉のたびに揺れる場所は避けます。

電源については、突然の停電が最も避けたい事象です。書き込みの最中に電源が落ちると、書きかけのファイルが壊れるだけでなく、ファイルシステムの管理情報が不整合になって録画機が起動しなくなることがあります。無停電電源装置を挟むと、安全な手順で停止させる余地が生まれます。選び方は関連記事で整理しています。

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配線の取り回しも見ておきます。HDDを増設したときは、ケーブルがファンに触れていないか、コネクタが半挿しになっていないかを確認します。接触不良は、転送エラーとして後から表面化します。

導入と入れ替えの手順

新しくHDDを入れるときも、劣化したものを交換するときも手順は共通します。

  1. 1

    録画機の仕様を先に確認する

    1ベイあたりの最大容量、対応するHDDの一覧、RAIDの可否、複数台混在時の扱いをマニュアルで読みます。ここで容量の上限が決まります。
  2. 2

    保存日数から必要容量を計算する

    カメラごとのビットレートを合計し、10.8を掛けて日数を掛けます。計算値に2割から3割の余裕を足した容量を選びます。
  3. 3

    年間書き込み量とワークロードレートを突き合わせる

    合計ビットレートに約3.94を掛けた値が年間の書き込み量です。製品のワークロードレートに対して余裕があるかを確かめます。
  4. 4

    型番単位で仕様を確認する

    同じ製品名でも容量によってワークロードレート、回転数、記録方式、RVセンサの有無が違うことがあります。買う容量の行を読みます。
  5. 5

    取り付け前に型番と設置日を記録する

    シリアル番号と型番を控え、設置日を台帳に残します。交換時期の判断と保証の申請で使います。
  6. 6

    初期化後に録画と再生を通しで試す

    全カメラの録画が始まること、任意の時刻を再生できること、外部媒体へ書き出せることを確認します。
  7. 7

    上書きが一周した時点で再確認する

    保存日数を過ぎたころに、想定した日数が実際に確保できているかを見ます。

交換時に忘れやすいのが、外した古いHDDの扱いです。映像が入ったまま保管すると、盗難や紛失のときに漏えいにつながります。廃棄する場合はデータを消去してから処分し、物理的な破壊まで行うか消去ソフトで上書きするかは、記録されている内容の性質で判断します。

購入前と設置後に確認する項目

  • 録画機のマニュアルで1ベイあたりの最大容量と対応HDDの一覧を確認した
  • カメラのビットレートを実測または設定値で把握し、合計値を計算した
  • 保存日数から必要容量を計算し、2割から3割の余裕を上乗せした
  • 年間書き込み量を計算し、製品のワークロードレートに収まることを確認した
  • 買う容量の行でワークロードレート、回転数、記録方式(CMRかSMRか)を確認した
  • 複数ベイに入れる場合はRVセンサの搭載有無と、RAIDならエラー回復制御の記述を確認した
  • 保存日数の方針を利用の必要性から決め、決めた理由を記録に残した
  • S.M.A.R.T.を読み出す手段と、設置場所の温度と振動と電源の安定性を確認した
  • 重要な映像を録画機の外へ書き出す手順を決め、実際に再生できることを試した
  • 交換で外したHDDの保管場所と廃棄の方法を決めた

録画が残っている状態を保つための順序

監視用途向けHDDの選び方は、突き詰めると三つの数字を突き合わせる作業です。保存したい日数から出した必要容量、カメラのビットレートから出した年間書き込み量、製品のワークロードレート。この三つが噛み合っていれば、想定した保存日数と耐久性の目安を満たしやすくなります。噛み合わない構成は、容量が足りずに保存日数が縮むか、耐久性の設計値を超えて寿命が早まるかのどちらかに向かいます。

そのうえで、録画機の仕様が最初の制約になることを忘れないようにします。マニュアルの対応容量と対応リストを読むところから始めると、無駄な買い直しを避けられます。

最後に残るのが、壊れたときにどうするかという設計です。S.M.A.R.T.の値を定期的に見て予兆に気づく仕組みと、必要な映像を録画機の外へ出す手順の二つを用意しておくと、HDDが1台壊れたときの被害を小さくできます。故障後も録画を止めたくない場合は、録画機が対応するRAIDや予備機への切り替え、交換用HDDの手配まで含めて先に決めておきます。保存期間については、個人情報保護委員会の資料が示すとおり、利用の必要性から日数を決め、必要がなくなったデータは遅滞なく消去するよう努めるという考え方に沿います。長く残すことと適切に運用することは別の話で、そこを分けて考えられるかが録画環境の質を決めます。

出典・参考

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