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VPNの選び方と使うときの注意点。用途別の考え方と誇大広告に惑わされないコツ

対象の目安: VPN利用を検討する個人・小規模事業者 / 入門

アオイ防御・運用担当
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VPNの選び方と使うときの注意点。用途別の考え方と誇大広告に惑わされないコツ

「VPNを入れれば安全」「VPNで匿名になれる」という言葉を、広告やレビュー記事で見かけたことがあるかもしれません。しかしVPNは、使う目的によって守ってくれるものがまったく異なります。社外から会社のネットワークに安全につなぐためのVPNと、カフェの公衆Wi-Fiで通信をのぞき見されないためのVPNでは、選ぶべきものも、期待できる効果もまるで違います。ここを混同したまま選ぶと、必要のない有料サービスにお金を払ったり、逆に守れているつもりで守れていなかったりします。

この記事は、VPNをこれから使おうか検討している個人や小規模事業者の方に向けて、VPNが原理的に「何を守り、何を守らないのか」を噛み砕いて説明します。そのうえで、用途別の選び方、誇大広告の見分け方、そして実在するサービスや機器の選定の考え方までを整理します。専門用語はそのつど補足するので、ネットワークに詳しくなくても読み進められます。

なお本記事にはアフィリエイトリンクを含みます。紹介する製品・サービスは編集部が用途別に選定したもので、効果を保証するものではありません。最終的な判断はご自身の利用環境と利用規約をご確認のうえ行ってください。詳細は記事冒頭の表示と広告・アフィリエイトについてをご覧ください。

まず用途を切り分ける

VPN(Virtual Private Network、仮想プライベートネットワーク)は、インターネット上に暗号化された仮想のトンネルを作り、その中を通信が通る仕組みです。トンネルの「両端」がどこにあるかで、用途が大きく二つに分かれます。ここを最初に決めないと、製品選びがぶれます。

用途何のためトンネルの両端代表的な選択肢
リモートアクセスVPN社外から社内ネットワーク・社内システムに安全につなぐ手元の端末 と 会社・自宅のVPN機器VPNルーター、企業向けVPN装置、クラウドVPN
拠点間VPN本社と支社など拠点同士を結ぶ拠点のVPN機器 と 別拠点のVPN機器業務用VPNルーター(IPsec対応)
プライバシー保護VPN公衆Wi-Fiでの盗聴防止、接続元IPの秘匿手元の端末 と VPN事業者のサーバー商用VPNサービス

リモートアクセスVPNと拠点間VPNは、「自分(自社)が管理するネットワークに安全につなぐ」ための仕組みです。一方、プライバシー保護VPNは「自分の通信を第三者の盗み見から守る」ための仕組みで、つなぐ先は事業者のサーバーです。広告で「VPN」と一括りに語られることが多いですが、この三つは目的も選定基準も別物だと覚えておいてください。

メモ

個人が「VPN」と聞いて思い浮かべるのは、たいてい三つ目の「プライバシー保護VPN(商用VPNサービス)」です。一方、会社の情シスが「VPN」と言うときは、ほぼ一つ目・二つ目を指します。同じ単語でも文脈で意味が変わるので、誰と話しているかに注意してください。

VPNが守るもの・守らないもの

VPN選びで最もつまずきやすいのが、VPNの守備範囲を過大評価してしまうことです。VPNが暗号化するのは「通信経路」だけです。次の表で、できること・できないことを整理します。

VPNが守れることVPNが守れないこと
同じWi-Fiにいる他人による通信ののぞき見(盗聴)の防止接続先のWebサイトに自分で入力したID・パスワードの漏えい
接続元のIPアドレス(おおよその所在地)の秘匿マルウェアのダウンロード・感染
通信内容の改ざんの検知(プロトコルによる)フィッシングサイトにだまされて情報を渡してしまうこと
通信先(社内システム等)への安全な到達ログイン後のサービス側からの追跡(Cookieやアカウント単位の追跡)

たとえば、VPNをつないだ状態でも、偽の銀行サイトにIDとパスワードを入力すれば情報は盗まれます。VPNは「通信の中身を運ぶ封筒を暗号化する」だけで、「封筒の中に何を書くか」「どこに送るか」は守ってくれないからです。フィッシングへの対処は別の対策が必要で、その基本は

で解説しています。

VPNを入れたから、もう怪しいリンクを踏んでも大丈夫だと思っていた、という誤解はよく見かけます。VPNは「盗み見」を防ぐもので、「だまされること」や「ウイルス」を防ぐものではない、と分けて理解するのが第一歩です。

ある初心者ユーザーの声

「完全匿名」「100%安全」という広告に注意

プライバシー保護VPNの広告では、しばしば「完全に匿名」「軍事レベルの暗号で100%安全」といった表現が使われます。原理から考えると、これらは正確ではありません。

VPNを使うと、接続先のWebサイトからは「VPN事業者のサーバーのIP」が見えるため、サイト側からあなたの本当のIPは隠せます。しかしその代わり、通信はすべてVPN事業者のサーバーを経由します。つまり、あなたの通信先を見ることが技術的に可能な立場に、ISP(プロバイダ)の代わりにVPN事業者が立つということです。だからこそ「事業者がログ(接続記録)を取らないか」「どこの国の法律に従うか」が、プライバシー目的では決定的に重要になります。「完全匿名」という言葉は、この事業者への信頼という前提を覆い隠してしまいます。

注意

「ノーログ(接続記録を残さない)」をうたうサービスでも、その主張が第三者監査で検証されているかは事業者によって差があります。広告のキャッチコピーではなく、監査の有無や運営会社・準拠法を確認してください。無料サービスでは、運営費を賄うために通信データを収集・販売したり、広告を挿入したりする例が報告されており、プライバシー目的では特に慎重な判断が必要です。

「100%安全」も同様です。前述のとおりVPNはフィッシングもマルウェアも防ぎません。暗号の強度がいくら高くても、守る範囲が経路に限られる以上、「100%安全」にはなりえません。こうした断定的な表現を見たら、まず用途と守備範囲に立ち返って冷静に判断してください。

プロトコルの基礎を最小限だけ

製品ページで「WireGuard対応」「IPsec/L2TP対応」といった表記を目にします。プロトコルはトンネルの作り方の規格で、ざっくり次のように理解しておけば十分です。

プロトコル主な用途特徴
WireGuard個人向けVPNサービスで普及設計がシンプルで高速。コード量が小さく監査しやすい
OpenVPN個人向け・小規模で広く使われる実績が長く柔軟。設定の自由度が高い
IPsec(IKEv2含む)拠点間・企業のリモートアクセスOSに標準搭載されることが多く、業務機器の定番

WireGuardは比較的新しいプロトコルで、Curve25519やChaCha20といった現代的な暗号方式に絞って構成されており、実装が小さく検証しやすいのが利点です。IPsecは古くからの定番で、NISTのIPsec VPN実装ガイド(SP 800-77 Rev.1)でも実装の指針が示されています。拠点間接続や業務用ルーターではIPsecが主流です。

NIST SP 800-77 Rev.1「Guide to IPsec VPNs」は、IPsecとIKEの実装に関する技術的なガイダンスを示した文書です。

個人がプライバシー保護目的でサービスを選ぶ場合、プロトコルは「WireGuardまたはOpenVPNに対応していれば概ね問題ない」という程度の理解で十分です。古いPPTPのみといった構成は避けてください。

用途別の選び方

プライバシー保護・公衆Wi-Fi対策が目的なら

外出先のカフェや空港のWi-Fiで通信ののぞき見を避けたい、接続元の所在地を隠したい、という目的なら、商用のVPNサービスを選びます。チェックすべきは次の点です。

  1. 1

    運営会社と準拠法を確認する

    どの国の会社が運営し、どの国の法律に従うかは、ログ開示の要請への対応に関わります。運営主体が明確なサービスを選びます。

  2. 2

    ログ方針と監査の有無を確認する

    「ノーログ」の主張が独立した第三者監査で検証されているかを見ます。キャッチコピーだけで判断しません。

  3. 3

    対応プロトコルと対応端末を確認する

    WireGuardまたはOpenVPNに対応し、自分が使うスマホ・PCのアプリが用意されているかを確認します。

  4. 4

    無料の落とし穴に注意する

    完全無料をうたうサービスは、収益源(データ収集・広告)を疑い、プライバシー目的では特に慎重に選びます。

社外から自宅・社内のネットワークにつなぎたいなら

リモートアクセスや拠点間接続が目的なら、VPN機能を持つルーターや業務用VPN機器を使います。個人や小規模事業者では、VPNサーバー機能を備えたルーターを自分で立てる方法があります。ただし、自分でVPNサーバーを公開するということは、その機器がインターネットから攻撃される対象になるということでもあります。後述する脆弱性対策が前提になります。

企業・自宅サーバーのVPN機器は「立てたら終わり」ではない

リモートアクセス用や拠点間用にVPN機器をインターネットに公開する場合、最も注意すべきはVPN機器自体の脆弱性です。VPN機器はネットワークの境界に置かれ、外部からアクセスできる位置にあるため、攻撃者にとって格好の入口になります。

IPAは、VPN機器等の深刻な脆弱性が相次いで報告され、実際にネットワーク貫通型攻撃に悪用されていると注意喚起しています。侵害された機器は、社内ネットワークへの侵入口になるだけでなく、他組織への攻撃の中継拠点(ORB)として乗っ取られるおそれがあるとされています。

IPAは、VPN機器の脆弱性を悪用したネットワーク貫通型攻撃と、機器がORB(攻撃の中継拠点)化されるおそれについて注意喚起しています。迅速なパッチ適用、管理画面の非公開化、攻撃面の可視化などが対策として挙げられています。

注意

VPN機器を公開して運用する場合は、ファームウェアやパッチを最新に保つこと、管理インターフェースをインターネットに直接公開しないこと、不要な機能・ポートを閉じることが必須です。サポートが終了した古い機器を使い続けるのは、最も避けるべき運用です。攻撃の兆候に気づいたら、JPCERT/CCなどの窓口に相談する選択肢も知っておいてください。

VPN機器を導入したら、アカウントの認証強化も忘れないでください。VPNの認証情報が漏れれば、暗号化されたトンネルごと正規利用者になりすまされます。多要素認証の併用が有効で、考え方は

にまとめています。

編集部選定: 用途別のサービス・機器

ここからは、用途別に実在するサービス・機器を紹介します。いずれも編集部が用途整理のために選定したもので、効果や継続提供を保証するものではありません。料金・仕様・対応プロトコルは変動するため、契約・購入前に必ず公式情報をご確認ください。最終判断はご自身の責任でお願いします。

プライバシー保護・公衆Wi-Fi対策向けのVPNサービス

NordVPN

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NordVPN

個人向けVPNサービスとして広く知られる選択肢の一つです。WireGuardベースの高速プロトコルに対応し、複数端末で利用できます。料金プランや機能は時期により変わるため、契約前に公式情報と利用規約を確認してください。

※価格・在庫は変動します。最新の情報は各販売サイトでご確認ください。

MillenVPN

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日本の事業者が提供するVPNサービスで、日本語サポートが受けられる点が特徴です。海外サービスの英語対応に不安がある方が比較検討の候補にしやすい選択肢です。対応国・サーバー数や料金は公式情報で最新を確認してください。

※価格・在庫は変動します。最新の情報は各販売サイトでご確認ください。

ExpressVPN

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個人向けVPNサービスの老舗の一つで、多数の国にサーバーを持つことで知られます。海外滞在時など接続環境が複雑なケースで候補に挙がります。匿名性や速度の体感は環境に左右されるため、過度な期待をせず試用範囲で確認するのがよいでしょう。

※価格・在庫は変動します。最新の情報は各販売サイトでご確認ください。

リモートアクセス・拠点間接続向けのVPNルーター

ヤマハ RTX830

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ヤマハ RTX830

小規模拠点向けの業務用VPNルーターの定番の一つです。IPsecによる拠点間接続や、L2TP/IPsecによるリモートアクセスに対応します。設定には一定のネットワーク知識が必要ですが、自宅・小規模事業者で社内ネットワークへの安全な接続を構築したい場合の選択肢です。公開運用時はファームウェア更新を欠かさないでください。

※価格・在庫は変動します。最新の情報は各販売サイトでご確認ください。

よくある質問

VPNを使えば完全に匿名になれますか?
なれません。接続先のサイトからは本当のIPを隠せますが、通信はVPN事業者のサーバーを経由するため、事業者の信頼性とログ方針が前提になります。また、サイトにログインすればアカウント単位で追跡されますし、ブラウザのCookie等による追跡も別の話です。『完全匿名』は誇大表現だと考えてください。
無料VPNを使っても大丈夫ですか?
用途によります。運営費を賄うために通信データを収集・販売したり広告を挿入したりする例が報告されており、プライバシー保護が目的なら特に慎重に選ぶべきです。運営主体やログ方針が不明なサービスは避けてください。
VPNを使えばウイルスやフィッシングも防げますか?
防げません。VPNが暗号化するのは通信経路だけです。マルウェアの感染や、偽サイトに自分で情報を入力してしまうフィッシングは、VPNの守備範囲外です。別途、端末側の対策や本人の注意が必要です。
プロトコルは何を選べばよいですか?
個人のプライバシー目的なら、WireGuardまたはOpenVPNに対応していれば概ね問題ありません。拠点間接続や業務用ルーターではIPsecが定番です。古いPPTPのみの構成は避けてください。
自分でVPNルーターを立てるときの注意点は?
機器をインターネットに公開する以上、その機器自体が攻撃対象になります。ファームウェアを最新に保ち、管理画面を外部に公開せず、不要な機能を閉じてください。サポート終了した古い機器の使い続けは避け、認証は多要素認証の併用が望ましいです。

まとめ

VPN選びチェックリスト

  • 目的が『リモートアクセス/拠点間』か『プライバシー保護』かを最初に切り分けたか
  • VPNが守るのは通信経路だけで、フィッシングやマルウェアは防げないと理解したか
  • 『完全匿名』『100%安全』という広告を鵜呑みにしていないか
  • プライバシー目的なら、運営主体・準拠法・ログ方針(第三者監査の有無)を確認したか
  • 無料サービスの収益源(データ収集・広告)のリスクを検討したか
  • VPN機器を公開運用する場合、パッチ適用・管理画面の非公開化・認証強化を計画したか

VPNは正しく使えば、公衆Wi-Fiでの盗聴防止や、社外からの安全な接続に役立つ実用的な道具です。一方で、「とりあえず安全になる魔法」ではありません。守れる範囲と守れない範囲を理解し、用途に合ったものを、誇大広告に惑わされずに選ぶことが、結局はいちばんの近道です。認証強化とあわせた多層防御の考え方は

もあわせてご覧ください。

出典・参考

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