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Ivanti Connect SecureのCVE-2026-104935がKEV入り、認証回避ゼロデイの影響版と侵害調査

対象の目安: Ivanti Connect SecureでリモートアクセスVPNを運用するネットワークとActive Directoryの管理者 / 実務

ソウ・攻撃・脆弱性リサーチ担当
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Ivanti Connect SecureのCVE-2026-104935がKEV入り、認証回避ゼロデイの影響版と侵害調査

2026年10月13日、IvantiはリモートアクセスVPN製品Ivanti Connect Secure(ICS)の脆弱性CVE-2026-104935を公表し、同日CISAがKnown Exploited Vulnerabilities Catalog(KEVカタログ)に追加しました。認証を回避され、遠隔の未認証の攻撃者に任意のコマンドを実行されるおそれがある欠陥で、公表の時点ですでに悪用が確認されています。

悪用を見つけたのは、顧客のインシデントを調べていたVolexityです。同社によると、攻撃者は3件のゼロデイを連鎖させ、侵害の時点で提供されていた修正をすべて適用済みだった22.8R2.4のICSで、root権限のコード実行に至りました。3件のうち2件がCVE-2026-104935として修正され、残る権限昇格の1件は執筆時点で修正版が出ていません。侵入後には、ICSに保存されたドメインの資格情報が盗まれ、Active Directory(AD)からLAPSのパスワードやBitLockerの回復キーが探されていました。この記事は、CISA、CVEレコード、NVD、Volexityの一次情報で確認できた範囲で、影響を受ける版と管理者の対応を整理します。記述は執筆時点(2026年10月14日)の情報に基づき、攻撃の再現手順は扱いません。

KEVカタログとCVEレコードに記録された内容

CISAが配布するKEVカタログのJSONフィード(執筆時点で確認したカタログバージョン2026.10.13)と、IvantiがCNAとして登録したCVEレコードの値です。

項目記録された値
vulnerabilityNameIvanti Connect Secure Authentication Bypass by Spoofing Vulnerability
CWECWE-290(なりすましによる認証回避)
CVSS v3.1(Ivanti)8.6 HIGH(AV:N/AC:L/PR:N/UI:N/S:U/C:H/I:L/A:L)
dateAdded2026-10-13
dueDate2026-10-16
knownRansomwareCampaignUseUnknown
forensicTriageYes
CISAのSSVC評価Exploitation: active、Automatable: yes、Technical Impact: total

KEVのshortDescriptionは「Ivanti Connect Secure contains an authentication bypass by spoofing vulnerability that allows a remote unauthenticated attacker to execute arbitrary commands.」です。requiredActionは、ベンダーの指示に沿った対処に加えて、BOD 26-04の指針とCISAの「Forensics Triage Requirements」に従うよう求めています。

期限は追加から3日後です。forensicTriageがYesであることは、パッチを当てるだけでなく、適用前に侵害されていなかったかを確かめる対象として扱われていることを示します。この期限と確認の義務を負うのは米国連邦政府の行政機関で、日本の民間組織に義務はありません。ただしICSはインターネットに公開して使う機器で、悪用の確認と自動化のしやすさ(Automatable: yes)がそろっているため、民間でも最優先で扱う対象です。

CVSSの機密性への影響はHigh、完全性と可用性への影響はLowと評価されています。一方でVolexityはroot権限のコード実行まで確認しており、CISAのSSVC評価も技術的な影響をtotalとしています。基本値の8.6だけを見て優先度を下げると、実際の被害の大きさを見誤ります。

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影響を受ける版と修正版

CISAのアラートが挙げる影響を受ける版と、CVEレコードで影響なし(unaffected)とされる版を系列ごとに並べます。

系列影響を受ける版(CISAアラート)影響なしとされる版(CVEレコード)
25.1.3系該当なし25.1.3.0、25.1.3.1
25.1.2系25.1.2.2以前記載なし
25.1.1系25.1.1.1以前記載なし
22.8系22.8R2.4以前22.8R2.5
22.7系該当なし22.7R2.14(説明文は22.7R2.14以前を影響なしとしています)

CVEレコードの説明文は「ICS before version 25.1.3.0」を影響範囲としています。25.1.1系と25.1.2系については、CVEレコードの影響なしの一覧に該当する版が載っていません。一部の報道は25.1.1.2も修正版として挙げていますが、執筆時点で一次情報から確かめられたのは、25.1.3.0以降と22.8R2.5が影響を受けないことまでです。25系を使っている環境は25.1.3.0以降が更新先の候補になりますが、仮想アプライアンスを含め、機種によって適用できる版が異なる場合があります。Ivantiのアドバイザリと互換性ガイドで、自社の機種に適用できる修正版を確かめてから更新先を決めてください。

22.8系は22.8R2.5で修正されていますが、CISAのアラートによると22.8系は2027年1月31日にサポートが終わります。今回22.8R2.5へ上げる場合も、25系への移行計画を並行して立てておきます。25系への移行には、Ivantiの互換性ガイドで機種と機能の対応を確認する必要があります。

Volexityは、侵害されたICSが当時の修正をすべて適用済み(fully patched)の22.8R2.4(Build 19097)だったと報告しています。22.8系の更新を欠かさず当てていても防げなかったゼロデイであり、更新の遅れが原因ではありません。

Volexityが報告した侵害の時系列

Volexityの報告とCISA、CVEレコードで確認できた日付を並べます。

日付出来事出所
2026-10-03攻撃者による悪用が始まったとVolexityが確認Volexity
2026-10-05Volexityが顧客のネットワーク監視で不審な活動を調べ始め、ICSを侵入の起点と特定Volexity
2026-10-10Volexityが脅威インテリジェンスサービスの顧客にIoCの提供を開始Volexity
2026-10-13Ivantiがアドバイザリと修正版を公開。CVEレコードとNVDに登録。CISAがKEVに追加しアラートを公表Ivanti、CISA、NVD
2026-10-16KEVの期限CISA

攻撃者は痕跡を消すためにログを削除しており、Volexityはメモリとディスクのイメージ、コアダンプの解析から攻撃の流れを組み立て直したと説明しています。Volexityは攻撃者をUTA0576と名付け、既知のグループとは別に追跡しています。動機については犯罪目的と見ていますが確度は低いとし、攻撃の開発と侵入後の活動に大規模言語モデル(LLM)を使っている可能性を中程度の確度で示しています。

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3件のゼロデイの連鎖と修正の状況

Volexityによると、攻撃は3件の欠陥をつないで成り立っていました。

段階欠陥の種類CVE修正の状況
1認証の回避CVE-2026-1049352026年10月13日に修正
2認証回避に続くコマンド実行CVE-2026-1049352026年10月13日に修正
3root権限への昇格未割り当て(執筆時点)未修正。Ivantiが今後数週間のうちに修正予定

外部から入り込む入口にあたる1と2は、今回の修正版で塞がれます。Volexityの報告では、3の権限昇格は1と2で機器上のコード実行を得た後に使われており、単独で外部から悪用できるとは説明されていません。ただし、更新前に侵入されていた場合は、攻撃者がすでにrootを得ている可能性を考えて調べる必要があります。3の修正版が出たら、改めて適用します。

ICSのような境界の機器は、インターネットに公開されていることが前提で、侵入されると社内のディレクトリや認証基盤への足場になります。この構図はMITRE ATT&CKでは公開アプリケーションの悪用(T1190)にあたります。

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侵入後に攻撃者が行ったこと

Volexityが確認した侵入後の行動は、ICSを踏み台にADの資格情報を集め、横展開の準備をするものでした。

  • ICSに保存されていた、LDAP連携用のドメインの資格情報を盗む
  • 独自のツールでADを検索し、LAPSで管理されたローカル管理者パスワードとBitLockerの回復キーを探す
  • 独自のKerberosツールで資格情報が有効かを試し、パスワードスプレー(T1110.003)を行う
  • LDAPの通信をパケットキャプチャし、認証ログから有効なユーザー名を拾う
  • DNSや社内ホストを調べてネットワークの構成を把握する
  • ログの改ざん、一時ファイルの削除、ツール名の偽装で痕跡を隠す(T1070)

Volexityによると、機器にバックドアやWebシェルは置かれず、コマンドとその結果は攻撃チェーンのHTTPSの要求と応答で受け渡されていました。攻撃者は操作のたびに脆弱性を突き直していたことになり、修正版の適用で入口を塞ぐ意味はここにもあります。Volexityは、攻撃は最終的な目的が見える前に検知され止められたとしたうえで、横展開とネットワーク全体の侵害に向けた準備だったと判断しています。

LAPSのパスワードとBitLockerの回復キーは、どちらもADに保存でき、読める権限があれば端末の管理者権限やディスクの中身に直結する情報です。Microsoftの説明では、AD DSに保存されたBitLockerの回復情報を既定で読めるのはDomain Adminsだけで、ほかの主体には委任して読ませる形になります。ICSが使うLDAPのサービスアカウントに、こうした機密属性を読む権限が委任されていないかを確認してください。

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管理者が進める対応

修正版の適用だけで終わらせず、侵害の確認と資格情報の入れ替えまでを一続きの作業として進めます。

  1. 1

    ICSの台数と版を洗い出す

    本番のゲートウェイだけでなく、クラスタの待機系、検証用、移行前に残した旧機も含めて、ICSが動いている機器と仮想アプライアンスを洗い出します。版と系列(22.7、22.8、25.1.1、25.1.2、25.1.3)を記録し、上の表と照らし合わせます。22.7系は影響を受けませんが、ほかの脆弱性への対応状況とサポート期限は別途確認します。

  2. 2

    更新の前に調査の材料を残す

    CISAは、侵害の有無の確認にネットワークとメモリのフォレンジックが必要だとしています。更新や再起動でメモリ上の痕跡は消えるため、侵害を疑う材料がある場合は、更新の前にIvantiのサポートやインシデント対応の事業者と、メモリやディスクの取得方法を相談します。あわせて、ICSの外側にあるファイアウォール、プロキシ、ADのドメインコントローラーのログを退避します。ICS自身のログは改ざんされている可能性があるため、外部に転送していたログを優先して残します。

  3. 3

    修正版へ更新する

    25系は25.1.3.0以降、22.8系は22.8R2.5を更新先の候補とし、Ivantiのアドバイザリと互換性ガイドで自社の機種に適用できる版を確かめてから更新します。設定のバックアップを取ってから作業し、更新後の版を記録します。22.8系は2027年1月31日にサポートが終わるため、25系への移行を予定に入れます。

  4. 4

    整合性チェックツールを実行し、結果を過信しない

    Ivantiの整合性チェックツール(ICT)を実行します。ただしCISAは、ICTがメモリ上で動く改変を検出できない可能性があると注意しており、Volexityもメモリ上での改変と設定ストアの復元によってICTに検出されなかったと報告しています。ICTの結果がクリーンでも、外部のログや通信の確認を省かないでください。

  5. 5

    ICSの周辺の通信を確認する

    Volexityは検知の手がかりとして、welcome.cgiへの大量のリクエストと、URLのパスとX-DSCGI-PATHヘッダーの値が一致しないリクエストを挙げています。リバースプロキシやWAFのログが残っていれば確認します。加えて、ICSのIPアドレスから出ているLDAPやKerberosの通信のうち通常の認証連携と異なる宛先や量のもの、ADへのパスワードスプレーにあたる認証失敗の連続、ICSから社内ホストへの走査がないかを調べます。VolexityはIoCをGitHubで公開しています。

  6. 6

    権限昇格の修正版を追う

    連鎖の3件目にあたる権限昇格は、執筆時点で修正版が出ていません。Ivantiのアドバイザリの更新を追う担当者を決め、修正版が出たら改めて適用します。

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侵害が疑われる場合の復旧と資格情報の入れ替え

CISAは、侵害が疑われる場合の手順として、設定をバックアップし、工場出荷状態にリセットして最新版へ上げ、設定を戻したうえで、すべてのアカウントのパスワード、証明書、APIキー、ライセンスサーバーの資格情報をリセットするよう勧めています。Ivantiの復旧手順(Recovery Steps)と設定のバックアップと復元の手順書も、この流れの参照先として示されています。

Volexityが確認した侵入後の行動を踏まえると、入れ替えの対象はICSの中だけにとどまりません。

対象入れ替えと確認の内容
ICSのローカル管理者と利用者ICSの管理者パスワード、ローカル認証の利用者のパスワードを変更
ICSに登録した証明書と鍵サーバー証明書と秘密鍵を再発行し、旧証明書を失効
LDAPやADの連携アカウントICSがLDAP連携に使うサービスアカウントのパスワードを変更し、権限が必要最小限か、機密属性を読めないかを確認
APIキーと外部連携ICSに登録したAPIキー、RADIUSの共有シークレット、ライセンスサーバーの資格情報を再発行
LAPSのパスワード探索の対象になった可能性があるため、期限を待たずにローカル管理者パスワードを更新
BitLockerの回復キー回復キーの読み取りが疑われる端末は、Intuneなどで回復パスワードのローテーションを実行
ドメインの利用者パスワードスプレーで有効と確かめられた可能性があるアカウントを、ADのログから洗い出してパスワードを変更

ICSのログは改ざんされている可能性があるため、どの資格情報が読まれたかをICSのログだけで判断しないでください。範囲を絞りきれない場合は、ICSが触れられた資格情報はすべて漏れたものとみなして入れ替えます。日本国内でインシデントの相談先が必要な場合は、JPCERT/CCのインシデント対応依頼の窓口を使えます。執筆時点で、JPCERT/CCからこの脆弱性についての注意喚起は確認できませんでした。

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インシデント発生時の初動対応。最初の1時間で何をするか

Ivanti Connect Secure CVE-2026-104935の対応チェック

  • 待機系や検証機を含めて、ICSが動いている機器と版をすべて洗い出した
  • 侵害を疑う材料がある場合は、更新の前にメモリとディスクの取得方法を相談し、外部に転送していたログを退避した
  • 機種ごとに適用できる修正版を確かめ、25系は25.1.3.0以降、22.8系は22.8R2.5へ更新して更新後の版を記録した
  • 22.8系を使っている場合は、2027年1月31日のサポート終了に向けて25系への移行を予定に入れた
  • 整合性チェックツールを実行し、結果がクリーンでも外部のログと通信の確認を行った
  • ICSのIPアドレスからのLDAP、Kerberos、パスワードスプレー、社内への走査がないかを調べた
  • ICSのLDAPサービスアカウントが、LAPSのパスワードやBitLockerの回復キーを読めないことを確認した
  • 侵害が疑われる場合は、工場出荷状態へのリセットと、パスワード、証明書、APIキー、LAPS、BitLockerの回復キーの入れ替えを行った
  • 連鎖の3件目にあたる権限昇格の修正版の告知を追う担当者を決めた

まとめ

CVE-2026-104935は、インターネットに公開されたICSで、認証を経ずにコマンドを実行される欠陥です。Volexityが確認した攻撃では、当時の修正をすべて適用済みの22.8R2.4でも侵入され、ICSに保存された資格情報を起点にADのLAPSパスワードやBitLockerの回復キーまで探されていました。自社の機種に適用できる修正版(25系は25.1.3.0以降、22.8系は22.8R2.5)へ直ちに更新してください。侵害の有無は、整合性チェックツールの結果やログに異常がないことだけでは否定できません。ICSの外側のログを調査の材料にし、疑わしい場合はネットワークとメモリのフォレンジックで確かめます。侵害が否定できない場合は、機器の再構築に加えて、ICSが触れられた資格情報をAD側まで含めて入れ替えます。ログやメモリの調査は、自組織が管理する機器に限って行ってください。

この記事は2026年10月14日時点の情報に基づいています。連鎖の3件目にあたる権限昇格の修正版や、25.1.1系と25.1.2系の修正版の扱いは今後更新される可能性があるため、Ivantiのアドバイザリ、CISAのKEVカタログ、Volexityの報告で最新の情報を確認してください。

出典・参考

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