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脆弱性・CVE解説

FortiSandboxの未認証OSコマンドインジェクションCVE-2026-25089。CISAが実悪用でKEV収録した検査装置の急所

対象の目安: FortiSandboxを運用する情報システム / 実務

ソウ攻撃・脆弱性リサーチ担当
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FortiSandboxの未認証OSコマンドインジェクションCVE-2026-25089。CISAが実悪用でKEV収録した検査装置の急所

FortiSandboxは、疑わしいファイルや通信を隔離した仮想環境で動かし、その挙動から未知のマルウェアを見つける検査装置(サンドボックス)です。ネットワークの境界や他のFortinet製品と連携して検体を受け取り、解析結果を防御へ還元する役割を担います。このFortiSandboxに、未認証の攻撃者が細工したHTTPリクエストで任意のOSコマンドを実行できる脆弱性CVE-2026-25089が見つかりました。分類はCWE-78のOSコマンドインジェクションで、Web UIを入口に到達します。米CISAは2026年7月16日、実際の悪用の証跡にもとづいてこの脆弱性を既知の悪用された脆弱性(KEV)カタログへ収録しました。

この記事は、FortiSandboxを運用する情報システムの担当に向けて、検体を検査する高価値の装置が未認証で乗っ取られる構図と、境界露出を絞る運用、パッチ適用後にも残る後始末を、NVDとFortinetのアドバイザリ、CISAの情報をもとに整理します。攻撃の再現手順やペイロードは示しません。事実は執筆時点で一次情報から確認できた範囲に限り、CVSS評価のように出典間で数値が異なる点は帰属を明記して併記します。脆弱性の検証は自組織が管理する環境に限って行います。

CVE-2026-25089の基本情報とCVSS評価の食い違い

CVE-2026-25089は、FortiSandboxのWeb UIを入口とするOSコマンドインジェクションの脆弱性です。NVDはCWE-78(OSコマンドインジェクション)に分類し、未認証の攻撃者が細工したHTTPリクエストで不正なコマンドを実行できると説明しています。認証を経ずにネットワーク越しに到達できる点が、この脆弱性を重く見る理由です。

CVSSは2つの値が並びます。NVDのCVE-2026-25089ページにはベーススコア9.8(CRITICAL)、ベクトルCVSS:3.1/AV:N/AC:L/PR:N/UI:N/S:U/C:H/I:H/A:Hが表示されますが、これはCNA(採番機関)であるFortinetが付与した基本値で、ページには「NVD assessment not yet provided」と記され、NVD独自の評価は執筆時点で行われていません。一方でFortinetの公式アドバイザリFG-IR-26-141は、同じ脆弱性を9.1(Critical)と評価しています。つまりスコアの食い違いは、NVD対Fortinetという構図ではなく、Fortinetが公表した2つの値(CVE記録のCNAスコア9.8がNVDページに掲載され、PSIRTページは9.1)の間の差です。いずれもCriticalの水準にありますが、優先度を機械的に数値でそろえる運用では差が影響し得るため、社内での記録にはNVDページ掲載の9.8(CNA提供値)とFortinet PSIRTの9.1の両方を帰属して残すことをおすすめします。

NVDのCVE-2026-25089ページは、この脆弱性を複数のFortiSandbox版に存在するOSコマンドインジェクション(CWE-78)として掲載し、未認証の攻撃者が細工したHTTPリクエストで不正なコマンドを実行できると説明しています。掲載されているCVSS v3.1ベーススコア9.8(CRITICAL、ベクトルAV:N/AC:L/PR:N/UI:N/S:U/C:H/I:H/A:H)はCNAであるFortinetが提供した値で、ページには「NVD assessment not yet provided」と記され、NVD独自の評価はまだ行われていません。

未認証でコマンド実行に至る経路

FortinetのアドバイザリFG-IR-26-141は、この脆弱性のタイトルを "Second-Order OS Command Injection via JSON Input on start vnc feature"(start vnc機能へのJSON入力を介した二次的なOSコマンドインジェクション)としています。二次的(Second-Order)という表現は、入力がいったんアプリケーション内部に保持されてから、別の処理で使われる段階でコマンドとして解釈される経路を指します。JSON入力として渡された値が、start vnc機能の内部でOSコマンドの組み立てに使われる際、特殊文字が無害化されないままシェルへ渡ることが入口になります。

OSコマンドインジェクションは、利用者が与えた入力をOSのコマンド文字列に連結し、そのままシェルへ渡すときに起きます。区切り文字やメタ文字が無害化されていないと、想定していたコマンドに攻撃者の指示が継ぎ足され、装置の権限でそれが実行されてしまいます。ここでは具体的な入力例や再現手順は示しませんが、この仕組みの一般的な解説は次の記事で整理しています。

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影響を受ける版と修正版

影響を受けるのはFortiSandboxの複数系統です。NVDとFortinetのアドバイザリによれば、FortiSandbox 4.2は全バージョン、4.4は4.4.0から4.4.8まで、5.0は5.0.0から5.0.5までが対象です。加えてFortiSandbox Cloudの5.0.4から5.0.5、FortiSandbox PaaSの5.0.4から5.0.5も含まれます。修正版はFortiSandbox 5.0.6以降と4.4.9以降で、CloudおよびPaaSは5.0.6以降が対処版です。

Fortinetは2026年6月にアドバイザリとパッチを公開しており、パッチの提供は2026年6月9日です。運用中の版が上記の範囲に該当するかをまず照合し、該当する場合は修正版への更新を計画します。

FortinetのPSIRTアドバイザリFG-IR-26-141は、本脆弱性を "Second-Order OS Command Injection via JSON Input on start vnc feature" として公開し、CVSSを9.1(Critical)と評価しています。影響を受ける版としてFortiSandbox 4.4.0〜4.4.8、5.0.0〜5.0.5、Cloud/PaaS 5.0.4〜5.0.5を挙げ、修正版として4.4.9以降と5.0.6以降を案内しています。

実悪用とKEV収録の時系列

Fortinet公開時点のアドバイザリには、実際に悪用されているという記載はありませんでした。その後、実環境での悪用の証跡が積み上がり、CISAは2026年7月16日にCVE-2026-25089をKEVカタログへ追加しました。同日には、関連するFortiSandboxの脆弱性CVE-2026-39808もあわせてKEVへ収録されています。CISAは拘束的運用指令(BOD)26-04にもとづき、連邦民間行政機関に対する是正期限を2026年7月19日と定めました。

実悪用の観測時期については、報告によればセキュリティ企業Defusedが6月中旬(報告では2026年6月16日)以降に攻撃を観測したと伝えられます。この観測時期の情報は二次情報にあたるため、確定した事実としてではなく報告としてとらえます。いずれにせよ、ベンダー公開の当初は悪用の記載が無かった脆弱性が、その後の証跡でKEV入りへ至った経緯であり、公開直後に悪用が無いことは安全を意味しないという点を示します。KEVは実環境での悪用が確認された脆弱性だけを収録する目録で、優先度づけの強い根拠になります。KEVやEPSSを使った優先度づけの考え方は次の記事で整理しています。

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サンドボックスという高価値資産の露出を絞る

FortiSandboxは、外部から受け取った検体を隔離環境で実行して解析する装置であり、その性質上、他の防御機器やネットワークと接して検体や解析結果をやり取りします。攻撃者がこの装置でコマンド実行に成功すると、解析用のマルウェア環境や、装置に保存された資格情報、連携先への通信経路へ影響が波及しうる立場を得ます。守るために置いた検査装置が、乗っ取られると横展開の起点に変わり得るという構図です。このような外部と接する装置の弱点が狙われやすい背景は次の記事で整理しています。

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FortinetのアドバイザリはこのCVEに固有の回避策を示していませんが、一般的な緩和として管理インターフェイス(HTTP/HTTPS管理UI)への到達を信頼できるIPアドレスに限定し、境界露出を絞ることが有効です。管理UIをインターネットへ直接さらさず、管理用の到達経路を運用に必要な範囲へ閉じることで、未認証で到達される面を小さくできます。装置を管理セグメントへ寄せ、業務ネットワークや外部から直接触れない配置にするネットワーク分離の考え方は次の記事で整理しています。

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パッチだけでは足りない対応手順

実悪用が観測されている脆弱性では、修正版を当てるだけでは対応が完結しません。更新前にすでに侵害されていた可能性を前提に、痕跡の確認と資格情報の後始末を並行して進めます。次の順序で手を付けます。

  1. 1

    運用中の版と露出面を確認する

    稼働中のFortiSandboxの版が影響範囲(4.2全般、4.4.0〜4.4.8、5.0.0〜5.0.5、Cloud/PaaS 5.0.4〜5.0.5)に該当するかを照合します。あわせて管理UI(HTTP/HTTPS)がどこから到達できる状態かを点検し、インターネットや広い社内ネットワークへ露出していないかを確認します。
  2. 2

    管理UIの到達を信頼できるIPへ絞る

    修正版の適用が完了するまでの間も含め、管理インターフェイスへのアクセスを信頼できるIPアドレスに限定します。管理経路を運用に必要な範囲へ閉じ、未認証で到達できる面を小さくします。
  3. 3

    修正版へアップグレードする

    FortiSandboxは5.0.6以降または4.4.9以降へ、Cloud/PaaSは5.0.6以降へ更新します。ファーム構成では各ノードの版と適用状況をそろえて確認します。
  4. 4

    適用前の侵害を前提に痕跡を調べる

    KEV収録の脆弱性はすでに悪用されているため、更新前に侵害されていた可能性を前提に調べます。想定外の管理者アカウントの追加、身に覚えのない設定変更、不審なコマンド実行やプロセス、外部への異常な通信が無いかを、装置と周辺機器のログで確認します。
  5. 5

    資格情報をローテーションする

    装置に保存または連携している資格情報(管理者パスワード、APIキー、連携先への接続情報など)をローテーションします。乗っ取り時に読み取られた前提で、旧資格情報を確実に無効化してから新しいものへ切り替えます。

修正版の適用と、管理UIの露出制限、侵害痕跡の確認、資格情報のローテーションは、どれか一つでは対応として不十分です。未認証でコマンド実行に至る脆弱性が実悪用の段階にある以上、パッチ適用を起点に、露出していた期間に何が起きた可能性があるかまで含めて確認します。

脆弱性の検証は自組織が管理する環境に限って行います。対象の所有者から明示的な許可を得ずに行うアクセスや検査は、関連法令や利用規約に抵触するおそれがあります。悪用手順の詳細をここで示さないのも同じ理由からです。

まとめ

CVE-2026-25089は、マルウェアを検査するはずのFortiSandboxが、未認証のHTTPリクエストで任意コマンド実行まで到達される危うさを示した脆弱性です。分類はCWE-78で、start vnc機能へのJSON入力を介した二次的なOSコマンドインジェクションが入口になります。CVSSはNVDページ掲載の9.8がCNA(Fortinet)提供値でNVD独自評価は未実施、Fortinet PSIRT(FG-IR-26-141)は9.1と帰属が分かれるため、記録には両方を残します。影響を受けるのは4.2全般、4.4.0〜4.4.8、5.0.0〜5.0.5、Cloud/PaaS 5.0.4〜5.0.5で、修正版は5.0.6以降と4.4.9以降です。Fortinetは2026年6月にパッチを公開し、CISAはその後の悪用の証跡にもとづき2026年7月16日にKEVへ収録し、連邦民間機関の是正期限を7月19日としました。対応の要点は、修正版へ更新したうえで管理UIの到達を信頼できるIPへ絞り、適用前の侵害を前提に痕跡を確認し、装置に保存や連携する資格情報をローテーションするまでを一続きで進めることにあります。

CVE-2026-25089への対応で確認したいポイント

  • 運用中のFortiSandboxの版が影響範囲(4.2全般、4.4.0〜4.4.8、5.0.0〜5.0.5、Cloud/PaaS 5.0.4〜5.0.5)に該当するか照合したか
  • 管理UI(HTTP/HTTPS)の到達範囲を点検し、インターネットや広い社内ネットワークへ露出していないか確認したか
  • 管理インターフェイスへのアクセスを信頼できるIPアドレスに限定したか
  • 修正版(5.0.6以降または4.4.9以降、Cloud/PaaSは5.0.6以降)へアップグレードし、ファーム全ノードでそろえたか
  • 適用前の侵害を前提に、想定外の管理者アカウントや設定変更、不審なコマンド実行や通信の痕跡を装置と周辺のログで確認したか
  • 装置に保存または連携する資格情報(管理者パスワード、APIキー、連携先接続情報)をローテーションし、旧資格情報を無効化したか

出典・参考

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